【循環器看護】心臓カテーテルの手技−アンカーテクニックとは−

心臓カテーテルに対するアンカー 循環/輸液
この記事は約9分で読めます。
  • アンカーは心臓カテーテルにおけるテクニック
  • 錨を下ろしてバックアップ力を上げる
IVR<br>Nurse
IVR
Nurse

心臓カテーテルはスキルや手技が分かれば分かるほど楽しくなります。アンカーテクニックは心臓カテーテルでもよく行われる手技です。初めて聞く方や仕組みが曖昧な方はぜひ確認してください。

はじめに

心臓カテーテルは医師や看護師だけでなく、放射線技師や臨床検査技師、時には臨床工学技士まで参加する他職種が関わる治療です。そのため、看護師として他職種に任せて良い業務も多くありますが、理解することでより心臓カテーテルを深めることができるのも事実です。

また、心臓カテーテルは略語なども多用します。流れ、テクニック、略語などを理解できれば更に心臓カテーテルが楽しくなること間違い無いです。

カテーテル関連の医療用語・略語はこちら

心臓カテーテルの基本 CAGを学ぶならこちら

デバイス DCB(薬剤コーデットバルーン)についてはこちら

参考資料

心臓カテーテルの入門です。基礎的な内容をイラスト豊富に分かりやすく記載されており、最初の1冊としては特におすすめです。

デバイスの概要などは書かれていますが、アブレーションの内容や手技の詳細は描かれていないので、よりハイレベルに心臓カテーテルを学びたい方は併せて、より専門的な参考書をオススメします。

心臓カテーテルのテクニック アンカーを解説

アンカーとは

アンカーは直訳するとを意味します。心臓カテーテルもそれに付随してつけたテクニックで錨を下ろす、固定力を強くする意味合いを持ちます。

使われる場面は主に完全閉塞(CTO)に近い病変で、ガイドワイヤー(GW)までは通ったけど、更にバックアップ力を上げたい時などに使われることが多いです。

アンカーの仕組み

アンカーの仕組みはバルーンカテーテルによるガイディングカテーテルの固定です。心臓カテーテルでは血管損傷などのリスクを避けるため基本的には柔らかい性状のデバイスを使用します。

柔らかい性状のデバイスを使うと血管損傷のリスクは避けられる反面、コシがなくなるため硬度な狭窄病変は通過できません。逆に通過するための硬いデバイスを使用することも可能ですが、硬度狭窄がある血管などはコレステロールの沈着なども多く、血管壁も脆弱なことが多いです。

それらの、血管損傷もできるだけ避けて治療も行いたいという考えから導き出されたのが、アンカーという手技です。アンカーはバルーンカテーテルをガイディングカテーテルの中に入れることで、ガイディングカテーテルのバックアップ力を上げるテクニックです。

IVR<br>Nurse
IVR
Nurse

グニャグニャな筒に一本の棒を入れることで、筒が曲がりにくくなるイメージです。イラストも入れて説明していきます。

アンカーの手技

心臓カテーテル、アンカー挿入前のイラスト

アンカーテクニックの手技まとめ

  1. ガイディングカテーテルからガイドワイヤー(GW)とバルーンカテーテルを挿入する
  2. バルーンカテーテルを病変部位より近位部の分岐血管に留置する
  3. バルーンカテーテルを拡張させて、体外から引く
  4. 引いたまま、病変部位のカテーテル通過を試みる

1.ガイディングカテーテルからGWとバルーンカテーテルを挿入する

アンカーテクニックも細分化すると複数ありますが、基本的にはガイドワイヤーは通過後、カテーテルが入らない場合に実施します。GW挿入から実施することも不可能ではないですが、通過を試みている間は結果的に分岐部をバルーンカテーテルで閉塞させることになります。

そのため、ガイドワイヤーに沿ってカテーテルを挿入するなど、簡易的な操作でないと、長時間の虚血を伴うため注意が必要です。バルーンのサイズは分岐部(拡張部)の血管径と同じサイズを選択することが多いです。

2.バルーンカテーテルを病変部位より近位部の分岐血管に留置する

挿入したバルーンカテーテルは病変部位より近位部の分岐血管に留置します。血管の選択としては血管内超音波(IVUS)などを使用して確認します。拡張して引力がかかるため、脆弱な血管は選択しないほうが良いです。

また、プラークなどが移動する可能性も少ない血管が望ましく、ステント留置している血管などを選択すると血管損傷のリスクが少ないです。このバルーンカテーテルをアンカーとして用います。

心臓カテーテルにおけるアンカー挿入後のイラスト
病変部位の近位部にアンカーを挿入

3.バルーンカテーテルを拡張させて、対外から引く

バルーンを適切な位置に留置した後、バルーンカテーテルを拡張(インフレーション)させて体外から引きます拡張は軽く引っ張っても抜けない程度の圧です。バルーンカテーテルは拡張し終えたら、術者または補助者が体外からカテーテルを引っ張ります。

アンカーとなるバルーンカテーテルを引くことで、バルーンカテーテルがガイディングカテーテルの支柱となりガイディングカテーテルによるバックアップ力が強固となります。

4.引いたまま、病変部位のカテーテル通過を試みる

アンカー用のバルーンカテーテルは引いて張力を持たせている間でのみ効力を発揮します。その間に、ガイディングカテーテルから病変治療用のバルーンカテーテルを操作します。

ガイディングカテーテルがアンカー用のバルーンカテーテルによってより強固になると、狭窄部を通過する力が強くなるためより推進力が増して狭窄部を通過できるようになります。

狭窄部通過後は、速やかにアンカー用のバルーンカテーテルを収縮(デフレーション)させて分岐部の虚血を解除します。狭窄部の治療後の確認と併せてアンカーを行っていた部分も血管内超音波(IVUS)を行い、血管損傷の有無なども確認することが多いです。

心臓カテーテルにおけるアンカー挿入後の治療イメージ画像

アンカーのメリット・デメリットまとめ

IVR<br>Nurse
IVR
Nurse

胸痛などの出現に併せた観察や対応、分岐部ではありますが虚血に伴う血圧低下なども予測されるため、血圧の変化に注意して観察すると良いです。

おわりに

  • 心臓カテーテルにおけるアンカーとは2本のバルーンカテーテルを使用するテクニック
  • アンカー用のバルーンカテーテルが支柱となりガイディングカテーテルのバックアップ力を強固にすることで狭窄病変を通過することができる
  • 胸痛の出現や血圧低下、末梢の塞栓などの合併症に注意する

心臓カテーテルでは様々な用語や手技が飛び交います。基本の流れが分かっていても、普段と違う過程が入ることで途端に流れが変わり、焦りや不安に繋がります。

アンカーテクニックは医師が行う手技であるため、直接的に関わる部分は少ないです。しかし、硬度狭窄病変が出現した際にはアンカーを使う可能性などを念頭に入れておくと焦らず、状況把握ができます。また、同様の症状でバルーンカテーテルが2本出た場合には、アンカーを連想し合併症の観察を行うことができれば看護の質向上に繋がります。

IVR<br>Nurse
IVR
Nurse

心臓カテーテルのテクニックを学び手技を理解すると、流れが把握できます。次の手技が予測できるようになると心臓カテーテルは更に楽しくなりますよ。

タイトルとURLをコピーしました