【症状別看護】眩暈(めまい)の検査と出現時の対応

症状別看護

前回記事はこちら↓

導入

前回の記事では、眩暈(めまい)の原因疾患や大まかな治療方針について書きました

本日は主にめまいに対する検査や対症療法、看護について記事にしたいと思います

  • めまい出現時の対応
    (受診は緊急?搬送後は?)
  • めまいの検査とは
  • めまいの対症療法と看護

参考資料

レジデントノート 2020年4月号

研修医向けの雑誌として販売されており、4月号では救急をテーマに特集していました

その中に眩暈の項目があり、眩暈に対する検査などが記載されていたので参考にしました

めまい出現時の対応

自宅や外出先など病院以外の場所でめまいが出現した時、どうしたら良いか不安が積もると思います

特に気になる点

  • 受診した方がいいか
  • 受診する診療科
  • 救急車は必要か

この2点について、救命センターで看護師をやってる経験からお伝えします

受診の目安

めまいは自覚症状とともに嘔気・嘔吐やふらつき、歩行困難など様々な症状を呈します

その中でも鑑別するポイントとして、まず初めに『初発のめまい』であるかを考えてみると良いです

言い換えれば『初めて経験するめまい』であるかです

突発するめまい(初発)に加えて、元々、良性発作性頭位めまい症(BPPV)などの基礎疾患を持っている場合であっても、いつもと違う感覚のめまいが出現した際には受診を検討した方が良いと思います

様々な原因疾患が潜んでいる可能性の高いめまいの中でも、特に命に関わる危険な疾患は『脳疾患』『心疾患』です

両者とも治療までの時間が予後に関わるため、出来るだけ早期に受診をオススメします

その他、反復するめまいに関しても、日常生活に影響が出るため症状が緩和したタイミングなどで受診をオススメします

自宅でできる対応 まとめ

  • めまいまたは前駆症状を感じたら安静にする
  • 部屋を暗くして刺激を減らす
  • めまいの誘発要因を知り、要因を減ずる
  • 嘔吐に備える
  • 症状が改善しない場合や麻痺、頭痛などの随伴症状か伴う場合は受診を検討する

受診する診療科

めまい症状出現時に受診するべき診療科の第一選択は『耳鼻科』です

めまいの原因疾患として多いのが耳鼻科疾患のため、耳鼻科への受診が基本となります

しかし、めまいの原因は多種多様で耳鼻科以外の病気が隠れている場合も多くあります

そのため、中枢性めまいなどの耳鼻科以外が原因のめまいを疑うような所見があった場合には
救命科や脳神経内科/外科への受診も検討してみて下さい

救急車の目安

救命センターで対応する中で、めまいの患者さんが救急搬送されてくることは少なくありません

しかし、救急車で来ることのメリットとデメリットがあるのでそれぞれお伝えします

メリット

  • 嘔気や嘔吐で動けなくても受診が可能
  • 早期に救急対応ができる
  • 移動時間が短縮できる
  • 救急隊が重症度を判断してくれる

デメリット

  • 病院の指定をできない
  • 2次救急指定病院以上の病院に搬送される
  • 近隣が断れば遠方の病院に搬送される
  • 帰宅方法が制限される
  • 複数いる場合、家族が別ルートで受診する必要がある
  • 救命科が対応する可能性が高い
    (診療科を選べない)

めまいで動けないと救急車での受診をすることがありますが、実は救急搬送にもデメリットが多くあります

特に病院を選べないことと診療科を選べないことは、とても大きなデメリットだと思います

耳鼻科疾患によるめまいは専門科である耳鼻科でのみ、詳しい検査や治療が可能です

しかし、救急搬送された場合は病院を選べない上に、専門科ではない医師が担当し、対症療法を行った後、耳鼻科への受診を勧められるケースも多いです

また、夜間も同様に耳鼻科の医師が不在のことがほとんどのため、脳梗塞などの救命が必要となる疾患を除き対症療法のみの対応が基本となります

そのため、行きたい病院やかかりたい診療科がある場合は、自力(タクシーや自家用車)での受診をオススメします

めまいの検査とは

めまいの原因は数多くありますが、その中でも代表的な検査方法をいくつか紹介します

HINS method

  • 中枢性めまいを鑑別する検査
f:id:ER-Nurse-k:20210908152250j:plain
f:id:ER-Nurse-k:20210908152246j:plain
f:id:ER-Nurse-k:20210908152240j:plain

MRI(Magnetic Resonance Imaging)

  • 磁気共鳴画像
  • 筒の中から発生する時期によって体の中の状態を確認する検査
    f:id:ER-Nurse-k:20210908154506j:plain

その他全身状態を検索するための検査

  • 血液ガス/採血→電解質異常・貧血・脱水
  • 心エコー/12誘導心電図→心因性

めまいの看護

主に初発のめまいに対する対応です

めまいへの対応で特に重要なのは『問診』です

めまいは極めて強い心身の苦痛をもたらすのにも関わらず、他者がはっきりと性質や程度を把握するのが難しい症状です

また、原因疾患も多種多様に存在するため、綿密な問診を行うことが大切になります

問診のポイント

  • 発症の仕方と経過
  • 性質
  • 持続時間
  • 誘発因子
  • 随伴症状
  • 既往歴

前回の記事でも紹介した通りめまいには随伴症状が多くあります

一例として、メニエール病であれば回転性のめまいに加え『難聴』『耳鳴』が特徴的な症状です

めまいの種類に加え、随伴症状から可能性の高い原因疾患を絞り込み治療方針を固めていきます

その後は予測される原因疾患に基づく治療と対症療法が基本となります

めまい出現時は経口摂取が困難のため点滴からの投与が主となる場合が多いです

看護/治療

問診で大まかな原因検索をしながらVSを含め、全身状態の観察をします

心疾患や脳疾患でなければ血圧や心拍は保たれていることが多く、急性期であっても生命に直結するほど全身状態が悪化していることは少ないです

特に注意して観察するのは瞳孔不動や眼振などの瞳孔所見です

眼振の特徴

  • 中枢性→注視方向眼振
  • 末梢性→一方向眼振

その他『意識障害』『構音障害』『感覚障害』『運動障害』などを伴う場合は脳疾患を疑い早期に頭部CTまたは MRIで評価します

脳梗塞の場合はearly CT signを除きCTでの画像評価は困難な場合が多いため、全身状態が安定していればMRIを優先する場合が多いです

脳梗塞の評価と同時に急性冠症候群や不整脈の鑑別を行います

胸部症状(胸痛・胸部絞扼感など)の問診に加え、12誘導心電図を撮ります

特に徐脈性不整脈ではめまいやふらつきが出現しやすいため、房室ブロックや洞不全症候群などの不整脈も適切に観察します

心疾患の可能性が低ければ心エコーは積極的には行いません

脳疾患や心疾患が否定されれば、内耳やその他の疾患を疑い対症療法を行っていきます

薬剤による対症療法

主にめまいと嘔吐に使われる代表的な薬剤です

この他にも原因疾患に併せて利尿薬や脳梗塞治療薬などが使われます

めまい

炭酸水素ナトリウム(メイロン)

めまいの発症期に対しては7%炭酸水素ナトリウム注射液(メイロン)を使用することが多いです

炭酸水素ナトリウムはアシドーシス(体の中が酸性に傾く)の治療薬であり、メニエール症候群や内耳障害によるめまい、嘔気・嘔吐にも有効とされています

作用

  • 内耳血流を増加することで、虚血による酸素分圧の低下を抑制し機能障害を改善させる
  • 耳石に作用して加速刺激感受性を低下させる
  • 二酸化炭素の増加よる血管拡張作用
  • アシドーシスの是正によるめまいの改善
  • 高浸透圧作用による循環血液量増加
  • 抹消及び中枢前庭系に作用

※炭酸水素ナトリウムは未解明な作用機序もあるため諸説あり

嘔気・嘔吐

メトクロプラミド

メトクロプラミドは主に制吐剤として使用します

めまいのみでなく様々な嘔気に対して使用可能ですが、過剰投与で錐体外路症状などの副作用が発症する可能性があるため、基本的には1A静脈内注射で対応します

作用

  • 制吐作用
  • 消化管運動促進作用

ジアゼパム(ホリゾン)

ジアゼパム自体に制吐作用はありませんが、抗不安や自律神経の調節作用により嘔気を軽減できます

特にストレスや精神的不安から来る嘔気に対して著効する傾向があります

循環や呼吸抑制があるため、VSの変動に注意が必要です

作用

  • 不安・緊張・抑うつ作用
  • 呼吸・循環抑制作用

まとめ

めまいの特徴

  • 原因疾患が幅広い
  • 初発のめまいや改善しないめまいは受診の目安
  • 出現時は安静が第一
  • 受診の第一選択は耳鼻科が基本
  • 治療は対症療法がメイン

救急外来で勤務していると、めまいに悩まされる人が日々絶えず搬送されてきます

それほど、めまいとは耐え難い症状であり、また、受診しても中々根治が難しい症状であると言えます

めまいは特にストレスで発症しやすい症状です

ストレス社会とも呼ばれる現代で、いかにストレスと上手く関わっていくかが、めまいの発症を抑える鍵となると思います

タイトルとURLをコピーしました