【心電図検定対策】基礎から始める心電図の勉強

心電図検定
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私は2020年度(2021.1実施)に心電図検定2級を取得し、次は1級の受講を検討しています

2022年度の心電図検定の実施日が決まりましたので、心電図対策をそろそろ始める方も多いかと思います

普段から臨床で心電図を判読された方や既に心電図検定を受講した方は判読の基礎はできていると思いますが、今回初めて受講しようと思ってる方は勉強方法に迷っているのではないでしょうか

心電図は心臓の電気刺激を現しただけのものでありますが、波形の種類や不整脈の種類なども多く勉強の手の付け方が分からない方も多くいると思います

新人看護師にもどうやって心電図を勉強したら良いか聞かれることが多いため、心電図の基礎について解説したいと思います

心電図検定とは

何度か他の記事でもピックアップしていますが、再度おさらい程度に紹介します

心電図検定とは日本不整脈学会が開催している認定資格であり、臨床検査技師が取得できる認定心電検査技師を除けば心電図において唯一の資格です

特徴は1〜4級に分かれているため実力に合わせて受けれる試験を選べることと、受講資格が特に制限ないため学生を含め幅広く受講可能であることです

心電図検定は下記のURLから申し込みや詳細を確認することができます

心電図検定 – 日本不整脈心電学会

コロナの流行に伴い、会場の分散や受験者同士の距離の確保など感染防止対策を徹底して行っています

2020年度から受講時期などが変更になり、近年は10月の初旬に申し込み、翌年1月に試験という形をとっています

心電図を学びたい方や心電図の実力を試したい方はぜひオススメの資格です

心電図の基礎

心電図を覚えるにあたって私が新人にも伝えている心電図を基礎中の基礎をお伝えします

本記事の主な内容

  • 心電図と心収縮の関係
  • 波形はPQRST(U)波から成り立つ

心電図と心収縮の関係

心電図とは心臓から流れる電気刺激を電極から感知して波形として描出したもので、心臓の収縮を示していると思われがちですが少し違いがあるので注意が必要です

本来、細胞内はカリウムイオン(K+)、細胞外はナトリウムイオン(Na+)が多く含まれており、体内にはナトリウムイオン(Na+)が多いため相対的に細胞内はマイナス、細胞外はプラスの電位を帯びています

洞房結節からの刺激で膜電位に変化が生じると脱分極という現象が起き、細胞内にナトリウムイオン等が大量に流入することで、細胞内の電位がプラスに変わります

細胞外がマイナスの電位、細胞内がプラスの電位へ変化することで、マイナスからプラスに電流が流れ、周囲の心筋細胞へと伝導していきます

この仕組みによって心臓には電気が流れ、その過程で細胞内に流入してきたカルシウムイオン(Ca2+)がアクチンと結合し、ミオシンへスライドすることで筋収縮が発生します(図1)

また、カルシウムイオンは脱分極によって流入してくる量に加え、筋小胞体からも多量に放出されます

図1 筋収縮までのイメージイラスト

心電図は電流が向かってくるベクトルをプラス(+)の電位と捉え、心房や心室の電気の伝導速度の違いを捉えることで、各々の波形の形を描いています

心電図は電位の大きさも波形の高さで判断することができるため、心臓の電位が大きければ波高は高く、心臓の電位が低ければ波高は低くなります

しかし、ここで注意が必要なのは、心電図はあくまで体表面から感知した電位の大きさを表しているということです

下記画像(図2)はQRS波の電位としては非常に高いと思いますが、実は、この心電図は左室肥大の心電図になります

図2 左室肥大の心電図

ムキムキ心筋でお馴染みの肥大型心筋症は、心筋が心負荷の代償で肥厚するため電位は高くなりますが、内腔は狭くなっているため心拍出量としては少なくなります

その他、体格の良い人は筋肉や脂肪などで電位の感知が悪くなり、波高が低く出ることもありますし、痩せ型の体格であれば電位がより感知しやすくなります

下記(図3)画像の心電図は致死性不整脈の一つである心室頻拍(VT)の心電図です

図3 心室頻拍の心電図

心電図の波形としては電位は高く大きく動いてますが、こちらも肥大型心筋症同様に心拍出量としては減少しています

心臓にはフランクスターリングの法則があり、心臓内に血液が充満していなければ高電位であっても心収縮力としては不十分になります

頻脈の場合は心臓が収縮して血液が充満する前に次の心収縮が起きるため、たとえ心臓の動きが良くても心臓に血液が充満していない状態であれば全身は送れる血液量は減少します

フランクスターリング(Frank-Starling)の法則

  • 心臓は心室内に血液量が増大すると心筋が引き伸ばされ、その反動で心収縮力が強くなる
  • 心収縮力を維持するためには心室に血液が充満している必要がある

心筋症と頻脈の2つの心電図を例に説明しましたが、心電図は体表面から心臓の電気刺激を感知するものであって、心拍出量はイコールの関係ではないことを覚えてもらいたいです

心電図を判読する際は電位の高さのみでなく、波形の形や既往歴、体格、心拍数など複合的に判断することが重要です

波形の成り立ち

心電図の基礎を学ぶ上でもう一つ大切なことは波形の仕組みを知ることです

不整脈の種類は非常に多く有りますが、波形の成り立ちを知ることで心房なのか心室なのか、心臓のどの部分が異常をきたしているのか推測することができます

今回は波形の成り立ちをできるだけ分かりやすく説明していきたいと思います

波形を理解する上で最低限理解するポイントは以下の4つです

  • 刺激は洞房結節から始まり、刺激伝導系を通って心室に伝わる
  • P波は心房を描く波形
  • QRS波は心室描く波形
  • T波は心臓の回復.及び電解質を描く波形

心電図は主にPQRSTで表現されることが多く、T波の後にU波が見られることもありますが、多くの心電図ではP波からT波までを一つの心拍として捉えます(図4)

刺激の始まりは、右心房の上大静脈接合部付近にある洞房結節と呼ばれる特殊細胞の集まりからです

洞房結節はペースメーカーの役割をしており、一定のペースで電気刺激を心房に伝えます

洞房結節から受け取った刺激は心房を通った後、房室結節、ヒス束、右脚・左脚、プルキンエ繊維といった刺激伝導系を通って心室に伝わります

刺激伝導系は特殊心筋細胞で出来ており、速伝導路とも呼ばれるように、刺激の伝達が早いことが特徴です

一例として、洞房結節から房室結節間は速伝導路を通らず心房を通るため、伝達は刺激伝導系の中では遅いです

その結果、心電図の波形であるP波は丸い半円を描くような幅の広い形になります(図4)

対して、全身に勢いよく血液を供給したい心室の場合は刺激伝導系を通り、心室全体をほぼ同時に収縮させます(図4)

図4 刺激伝導系と心電図波形

P波

P波は心臓の電気刺激の中で最初の波形であり、主に心房の興奮を表します

P波は右房と左房の総和であり、洞房結節から近い右房が先に興奮します

その後、左房が興奮するためP波の前半は右房成分、後半は左房成分で成り立っています(図5)

図5 P波の成り立ち

そのため、右房負荷では右房成分が大きくなるため左房と重なる部分が増え、P波は増高します

左房負荷では左房成分が大きくなるためP波がより幅広い形になります

  • P波は右房と左房の総和
  • 右房負荷ではP波増高
  • 左房負荷では幅広いP波

QRS波

心房の興奮が起こった後、房室結節からヒス束へ伝導が起こってる間に、心室は心房から供給された血液を充満させます

その後、刺激伝導系により一気に心室内に刺激が伝達され心室が収縮します

QRS波は心室の収縮を表している波形であり、心房より幅が狭く高電位な波形になっています

心室の場合はほとんど同時に収縮しますが、心室においても右室と左室の総和になってます

そのため、脚ブロックなどで右室や左室に伝導障害が起こると、特定の誘導では幅広いQRS波になります

  • QRS波形は心室の収縮
  • P波と比べて幅が狭く高電位
  • 脚ブロックなどの伝導障害で幅広くなる

T波

QRS波が終わった後に休止期があり、その後、心室の再分極を示すT波が描出されます

心室の休止期

  • S波〜T波まで
  • 不応期とも呼ばれ、心室が刺激に対して反応しない時期
  • 薬剤性QT延長症候群などでは不応期が延長した場合、心室期外収縮(PVC)などが入る事がある
  • 不応期に期外収縮が入ると、多形性心室頻拍(トルサード・ド・ポワンツ)や心室頻拍(VT)などの致死性不整脈をきたしやすい

細胞内にナトリウムイオン(Na+)やカルシウムイオン(Ca2+)などが流入して脱分極が起こりますが、再分極ではそれらの電解質が元に戻ります

T波の向きは基本的に上向きですがこれには、再分極における心室グラジエントが関わっています

心室グラジエント(ventricular gradient)

心内膜側では、活動電位の再分極に関わるカリウムイオン(K+)チャネルの発現量が少なく、活動電位持続時間が心外膜側よりも長いこと

心電図は向かってくるベクトルの場合は上向き、離れていくベクトルの場合は下向きの波形を示します

心筋において刺激は心内膜から心外膜に向かって伝導するため、QRS波は上向きになることが多いです(図6)

図6 心電図波形の向き

対してT波は心室の再分極のため、本来であれば電気的興奮が収まっていく状態でありQRSとは反対向きの波形を示すはずです

しかし、心室グラジエントにより再分極は心外膜から心内膜に向かって起こるため、結果として上向きのT波となります(図7)

図7 T波のメカニズム イメージ
  • 不応期の延長は致死性不整脈のリスク
  • T波は心室の再分極
  • T波は電気的興奮の消褪+心外膜から起こる再分極によって上向きになる

まとめ

心電図は未解明な部分が数多くありますが、波形の成り立ちをイメージできれば心臓のどの部分が障害をきたしてるか予測できます

また、今後の心電図の勉強の際に、右房負荷や左房負荷、RonTなど仕組みがわかることでスムーズに理解できる不整脈も多くあるため基礎の定着は重要です

今回は心電図の基礎をお伝えしましたが、心電図は反復して判読することが大切です

日常からモニター誘導や12誘導を意識して判読することで、心電図における違和感を見つけやすくなると思います

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