【診療科情報】救急外来看護師の仕事と役割

部署のすすめ
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はじめに

救急車やドクターヘリを受け入れることができる救急外来は新人看護師から憧れの配属先として見られることも多いです。

しかし、具体的にどんな業務をこなしているのか、救急外来の仕事内容は病棟で勤務していると曖昧な部分もあるかと思います。

救急外来看護師の1日のスケジュールは病棟とは大きく異なるので特徴なども含めてお伝えしていきます。

救急外来看護師の仕事

救急外来の看護師の1日の業務を以下に示します(表1)。

7:40出勤
8:00業務開始・申し送り
電話対応
患者受け入れ・対応・記録
12:00お昼休憩
13:00電話対応
患者受け入れ・対応・記録
16:00物品チェック
17:00申し送り・業務終了
17:20帰宅
表1 救急外来看護師の1日の流れ
ER<br> Nurse
ER
Nurse

看護師の主要な業務は電話対応と患者対応の2つのみです。

救急外来看護師の業務には、病棟のような事前の情報収集も1日の行動計画もほとんどありません。主な情報収集は勤務前から救急外来に来院された患者さんと、救命科で外来を持っている場合は定時外来で来院される患者さんになります。

勤務時間終了後も救急外来にいる患者さんの申し送りは必要ですが、記録等で残業することも病棟と比べると比較的少ないです。

救急外来の1番の特徴は繁忙度合いが日によって異なることです。救急車の電話が鳴り止まない日もあれば、1日を通して比較的平和な日もあります。

その状況に応じて臨機応変に対応していくため、休憩時間が予定より前後することも多くあります。

その他、救急外来の業務として物品チェックを各勤務で行います。

病棟でも物品の定数確認は行うと思いますが、いつでも受け入れできるようにするため、輸液ポンプなども含めて様々な物品の定数確認を行なっています。

また、あらゆる患者さんに備えて対応できるように薬剤なども定数が多いため、不足などがないよう確認が必要です。

電話対応

多くの病院では夜間や休日、看護師が電話対応を行うことが多いです。

看護師が行う電話対応は主に一次救急と二次救急になります。

三次救急に関しては早急な対応を必要とするため、医師が直接電話を受ける事が多いです。

電話対応する際はメモ用紙(表2)に情報を記入し、記入した情報を基に医師に受け入れの有無を確認します。

情報記入用のメモ用紙の一例

表2 記録記入用紙の一例
新人看護師
新人看護師

思ったより簡易的なメモですね

ER<br> Nurse
ER
Nurse

全ての疾患が対象になるため、記載内容はフリーに項目が多くなります

電話で収集する情報は患者さんと連絡を受けた看護師によって異なります。

内容を細かく聴取する看護師もいれば大まかな概要だけ聴取する看護師もいます。

しかし、疾患によって必須に収集すべき情報はあるので、その情報を的確に収集できるかが看護師の腕の見せ所です。

受け入れ準備

電話で収容可能の旨を伝えたら、来院までの間に受け入れの準備を行います。

救急車の搬送であれば10〜30分、それ以外であれば60分以内に来院する事が多いです。

救急要請が病院の近くであれば、最短5分くらいで来院することもあります。受け入れ準備は基本的な物品に重症度と疾患に合わせて追加します。

初療(受け入れ)物品

  • モニター(血圧.心拍.呼吸.酸素飽和度)
  • 体温計
  • 点滴資材(細胞外液)
  • 採血用スピッツ(血算.生化学)

よく使う追加物品(重症度.疾患別)

  • 酸素吸入(低酸素血症など)
  • 挿管道具(低酸素血症.意識障害など)
  • ペンライト(意識障害.脳血管疾患)
  • 追加採血用スピッツ(凝固.アンモニア.BNPなど)
  • 12誘導心電図(循環器疾患)
  • 除細動(VF/VT)
  • タイマー(心肺停止/CPA)
  • アドレナリン(心肺停止/CPA)
  • バックボード.ネックカラー(外傷)
  • 縫合物品.洗浄物品(創傷)
  • 追加点滴資材(ショック)
  • その他薬剤(適宜)

救急外来の初療において大原則は致死的疾患の早期除外です。そのため、予測し得る疾患を広めに想定し検査を行います

表3 意識障害を一例とした疾患予測
ER<br> Nurse
ER
Nurse

電話で聴取した既往歴や症状から疾患を予測して準備を行います。

意識障害を例とすると脳血管疾患や循環器疾患、感染症など様々な原因が考えられます。

その中でも、食道静脈瘤破裂などは既往歴に肝疾患がなく吐血も見られなければ原因としては非常に考えにくいので、受け入れ準備の時点で判断できます。

しかし、道で倒れていた場合などによる意識障害で、既往歴などが不明の際は低血糖やアルコールなど様々な要因を想定して対応します。

意識障害の原因疾患であれば、AIUEOTIPSDONTに沿って原因を考える事が多いです。

患者対応

患者対応では第一印象の把握を最初に行います。

  • 意識状態
  • 呼吸様式
  • 顔面蒼白
  • 抹消冷感
  • 冷汗
  • チアノーゼ
  • 失禁
  • 痙攣

大まかな見た目で重症度を把握した後、病院のストレッチャーへ移動します。

移動後はABCDEに沿って全身状態を確認し、必要があれば治療を行なっていきます。

  • Airway:気道
  • Breathing:呼吸
  • Circulation:循環
  • Dysfunction of CNS:意識・中枢神経
  • Environmental and temperature:体温

外傷では切迫するDを念頭に入れ、循環器疾患が疑わしい場合は12誘導心電図検査を最優先で行います。

AとBの観察

Aの気道とBの呼吸の観察方法の違いは、主に以下のように評価することが多いです。

  • A→気道損傷の有無.口からの呼吸の有無.発声の有無
  • B→呼吸回数.呼吸様式.胸郭挙上の有無

発声が出来ていれば気道は開通していると判断できるので、最も簡易的に評価が可能です。

救急外来の治療においては重症度より緊急度を重要視します。

重症度はその病態の悪化してる状態及び見込みを表し、緊急度は今すぐ治療を必要とするかどうかを表します。

重症度と緊急度

  • 重症度も緊急度も高い:心肺停止
  • 重症度のみ高い:悪性新生物(癌)
  • 緊急度のみ高い:自然気胸

気胸など早期に治療すれば予後良好の疾患は、緊急度は高いが重症度は低い。

救急外来の隙間時間

新人看護師
新人看護師

救急外来に患者さんがいない時もあるんですか?

ER<br> Nurse
ER
Nurse

もちろんあります。その時は病棟の手伝いなどをしています。

特に夜間など救急患者がいない時間は、病棟の手伝いなどヘルプに回ることが多いです。

また、救急外来と放射線科で一部署としている病院や救命病棟と救急外来が連携している病院も多いです。

救急外来看護師のやりがい

救命の最前線に立つこと

救急外来看護師において1番の魅力は救命の最前線に立つことです。

看護師として、目指す姿は様々だと思いますが命を助けられる看護師が理想としている人も多くいると思います。

見逃してはならない症状や間違えてはいけない薬の投与を適切に行うことは、看護師として重要な役目です。

その上で患者・家族に思いやりや寄り添う看護を行うことでより良い看護を実施することができます。

心肺停止状態の胸骨圧迫や昇圧剤の投与など、一分一秒を争う場面で、適切で的確な対応を看護師が求められますが、自身のその行動が救命に繋がります。

救急外来看護師はそんな命の最前線に立ち、常に命と向き合いながら最善の治療になるよう看護していく場です。

常に学びがあること

救急外来では診療科によって受け入れ数に差はありますが、全診療科を受け入れます。

様々な疾患を間近で見て看護を行うことは、色々な疾患をに触れ合い学びになります。

また、救急外来で対応するにあたって医師との連携が必要不可欠です。

その他画像検査では臨床放射線技師、人工心肺(PCPS)などでは臨床工学技士など多くの職種と関わる機会が多いです。

そのため、日常の中でCT画像の見方や疾患に対するメカニズム、心電図などを教わる機会も多くあります。

救急外来で看護をしているとそれらの学びが常に身近にあるので、自己研鑽も必要ですが日常業務の中で学ぶことも多くあります。

おわりに

救急外来の1日は患者数、受け入れ患者の重症度や緊急度によって大きく異なります。

時には看護師1人で患者を対応しなければいけない状況もあり、臨機応変さが求められます。

その中で大切にすることが周囲との連携です。

医者や他の看護師などと連携してチームで医療を行うことで、より良い救急医療を行うことができます。

救急外来と救命病棟の両方を勤務してきた経験を踏まえ、救急外来と病棟には双方に良いところがあり相互的に活かすことができます。

安全管理や患者とのコミュニケーションなどは病棟の方がより時間をかけて学ぶことができました。

救急外来は踏み込みにくいイメージがあると思いますが、スキル・経験共に成長することのできる良い環境なので興味のある方はぜひ救急外来のお仕事を検討してみてください。

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