【救急看護】INARSの基礎知識と学習内容

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ここではINARSで実際に学ぶ学習内容を紹介します。INARSプロバイダーの事前学習やインストラクターを目指す方の復習に活用してください。

INARSは評価・判断・対応を体系的アプローチで行い、緊急性を踏まえた観察や報告を学ぶ研修です。具体的にどのような流れになっているのかINARSの基礎知識を紐解いていきます。

INARSの概要についてはこちらから↓

INARSインストラクターを目指す方はこちら↓

INARSの構成

INARSは急変の第一発見者となる可能性が高い、看護師の対応能力を向上させるために考案された講習会です。

急変の大半は6〜8時間以内に予兆があったとされており、その些細な変化を見逃さないために確実に観察・評価・対応を行っていくことを目的としています。

INARSを基に心停止を回避するための適切な看護介入を学んでいきましょう。

INARSの到達目標

INARSの学習目標

  • 酸素循環に沿って評価を進められる
  • 酸素循環に関る危機的異常を認識できる
  • 状態安定化のために基本的な手技を用いて対処できる
  • 評価-認識-行動の手順を繰り返し、行動を適正化できる
  • チームで協力することの重要性について理解する
  • 医師に緊急度を含む適切な報告ができる

上記の学習目標から分かる通り、INARSの到達目標は急変の予兆を察知し緊急度を踏まえた報告ができることです。

あくまでも、医師へ適切に報告し対処を求めるところが目的なので、実際の急変対応などの処置は含まれていません。

INARSでは、それらの学習目標を踏まえて個々のスキルアップチームのスキルアップ報告能力のスキルアップを目的に学んでいきます。

INARS全体の流れ

INARSの大まかな流れを以下の図に表します。

INARSを含め緊急時の対応は第一印象一次評価二次評価三次評価の4つの段階で主に構成されます。

更に第一印象と一次評価では観察→評価→対応の順序で行動していきます。対応で介入を行えば再度、観察→評価していき、介入が不要となった時点で次の項目へ移ります。

この螺旋を描くように観察→評価→対応を繰り返しながら、ABCDを評価していく過程を体系的アプローチといいます。目標管理などで一般的に使用される計画→実行→評価を繰り返していくPDAサイクルと同様の考え方です。

一次評価ではAirway(気道).Breathing(呼吸).Circulation(循環).Dysfunction of CNS(意識)に分けてアプローチしていきます。

※シナリオの際はExposure &environmental control(体温)も含めてABCDEアプローチで行います。

INARS各論

ここでは、INARSの内容をポイントを絞って解説していきます。INARSを学習したい方は、ぜひこちらを参考にしてください。

第一印象

第一印象は接触してから数秒以内に評価する。

第一印象の観察項目

意識(外観)意識状態の変化(興奮.ぐったり)、視線や言葉など
呼吸呼吸努力、異常な呼吸音、呼吸数の異常
循環皮膚色、発汗

第一印象の評価・対応

  • 生命を脅かす緊急事態→急変対応へ
  • 上記項目が何となくおかしい(気になる)→一次評価へ
  • 何も異常を感じない→介入終了

Airway(気道)

  • 到達目標:Aの評価方法と認識の仕方、サポートするための具体的な手技について理解すること
  • ポイント:呼吸と異なることを明確にすること
  • メモ:気道は声門を含む上気道を示す。

気道の観察項目

見て胸郭の動き
聞いて発声、気道狭窄音
感じて呼気

気道の評価・対応

評価状態対応
開通正常な気道/気道の状態安定B(呼吸)の介入へ
狭窄簡単な処置から高度な処置が必要用手的気道確保
吸引
エアウェイ
閉塞迅速で適切な気道確保が必要応援要請・報告
気管挿管
異物除去

対応を行った場合は再度、気道の観察→評価→対応を繰り返し安定した時点で呼吸の観察へ移る。

  • 吸引は10秒以内/回
  • 経鼻(鼻咽頭)エアウェイの目安:JCS2桁、サイズは鼻翼から耳たぶ
  • 経口(口咽頭)エアウェイの目安:JCS3桁、サイズは口角から下顎角

Breathing(呼吸)

  • 到達目標:Bの評価方法と認識の仕方、サポートするための具体的な手技について理解すること
  • ポイント:呼吸窮迫と呼吸不全の違いは代償機能が破綻していること、簡易的な処置での酸素化の維持が不十分であること。

呼吸の観察項目

見て呼吸様式(陥没呼吸.補助筋の使用)、胸郭左右差
呼気・吸気時間延長
聴いて呼吸音、肺雑音
数えて呼吸数,SpO2

呼吸の評価・対応

評価状態対応
正常呼吸呼吸状態安定C(循環)の介入へ
呼吸窮迫呼吸回数増加
努力呼吸
酸素投与
(カヌラ、マスク)
呼吸不全徐呼吸、無呼吸
SpO2の著しい低下
BVMによる補助換気
気管挿管.報告

緊急事態(呼吸不全)による処置が必要な場合は、一度評価を中断し介入を行う。

  • 鼻カニューレ:成人で最大流量は6L/minまで
  • フェイスマスク:6~10L投与で35~60%投与可能
  • リザーバー付きフェイスマスク:10L以上で100%に近い高濃度酸素投与が可能
  • 補助換気:5~6秒/回.胸郭が上がる程度

Circulation(循環)

  • 到達目標:Cの評価方法と認識の仕方、サポートするための具体的な手技について理解すること。
  • 到達目標:ショックを早期に認識すること。
  • ポイント:ショックに陥っている時点で危機的状態であることを理解する。

循環の観察項目

触って末梢冷汗.脈圧.
脈見て脈拍数
CRT
Bp
5秒爪を押して離す時間(CRT)が2秒を超えた場合ショックの所見
収縮期血圧90mmHg未満あるいは平時より20mmHg以上の低下でショックの所見

循環の評価・対応

評価状態対応
代償作用なし循環動態安定Dの評価へ
代償性ショック血圧低下はないが、皮膚冷感・湿潤、頻脈、CRT延長ありABCD安定化(OMI)
報告
救急カートの準備
低血圧性ショック代償機転が破綻して血圧が低下ABC D安定化(OMI)
報告
救急カートの準備

低血圧性ショックに陥る前に介入することで心停止回避に繋がる。

  • OMIとはすぐにできるABCD安定化のための行動
  • OMI:O2(酸素投与).Monitor(モニター).IV(血管路確保)

Dysfunction of CNS(意識)

  • 到達目標:Dの評価法と認識の仕方.行動としてDをサポートするための具体的な手技について学ぶ
  • ポイント:血糖以外でDを安定させる方法はないため、異常がある場合には早期に報告
  • ポイント:意識障害はABCが大きく関与しているため、ABCの安定化を図る

意識の観察項目

GCSGCSで開眼.言語.運動を評価
瞳孔瞳孔不動.共同偏視
麻痺片麻痺.四肢麻痺.痺れ
血糖高血糖.低血糖

意識の評価・対応

評価状態対応
GCS15点正常Eの介入及び二次評価へ
GCS14〜9点軽度〜中等度意識障害ABCのサポート
(OMI)
GCS8点以下または
進行して2点以上低下
脳ヘルニアABCのサポート(OMI)
応援要請.報告
気管挿管などの準備
低血糖.高血糖血糖に伴う意識障害血糖補正

二次評価 SAMPLE

一次評価で明らかな異常がなかった場合や、緊急でなく背景を含めて評価したいときには二次評価へ移る。

SAMPLEによる病歴聴取

Sign症状
Allergyアレルギー
Medication内服薬
Past medical history既往歴
Last meal最終食事
Event出来事

三次評価

三次評価では検査結果を含めて評価する。CTやレントゲンなどの所見を総合的に含めて判断を行う。

三次評価に関しては二次評価の後に実施する物ではなく、必要な際に行う

循環の補助的項目として12誘導心電図を実施するなど、評価・報告する際に活用できる。

まとめ

普段何気なく行っている看護を細かく分けて考えると、INARSのアプローチと同様の観察項目になります。

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INARSは当たり前のことを確実にやることで些細な変化を見逃さないこと。それによって、急変の早期発見につながることができます。

臨床ではSAMPLEの聴取は一次評価と併せて行うことが多いですが、ここでは、確実に必要な情報を取得するために敢えて分けて確認しています。

また、INARSには正解はありません。報告と記載している部分もあくまで目安であり、上司への報告なのか医師へ報告するのか、INARSを経て報告する意識を持てるようになることが大切です。

急変を予測するために必要な情報や評価、対応方法をINARSで学び、臨床で応用して活用することでより良い看護につながると思います。

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