放射線看護師と言われるとあまりイメージがわかないこともありあます、放射線科は外来の看護師が担ってることの多い部署です。
各病院のWEBホームページやパンフレットに記載されている部署紹介を見ても、放射線科を特集していることは滅多にありません。
整形外科や消化器内科などピックアップされる科ではありませんが、放射線科は縁の下の力持ちです。臨床看護師として心臓カテーテルなどを含めて放射線科に従事した経験から放射線科の特徴や魅力をお伝えします。
Nurse
放射線科はどの部署にも引けを取らない奥の深い場所であり、検査のプロです。
参考資料
これから始めるIVR
IVRについての基礎が記載されている本です。実際の造影画像なども写真付きで解説されていますが、主に医者を対象とした参考書のため看護師の導入としては少し難しい内容でした。
看護師向けのIVRの本は意外と少なく、心臓カテーテルなど分野に特化した参考書を探す方が見つかりやすいです。
やさしくわかる心臓カテーテル検査・治療・看護
こちらの参考資料は心臓カテーテルの基本が載っています。
心臓カテーテルの一般的な検査や看護が分かりやすくイラスト付きで載っているので、これから心臓カテーテルを始める方にはオススメの一冊です。
放射線科とは
放射線科とは主に透視を必要とする検査や治療を担う診療科になります。透視とはX線と呼ばれる電磁波を物質に当てることを示します。
物質の密度によってX線が通過するものとしないものがあるため、そのコントラストを描出することで身体の異常を発見することができます。
放射線科に携わる職種として放射線科医や放射線科看護師、放射線技師、臨床工学技士なとがいます。
放射線科医と放射線科看護師は役割が違う
- 放射線科医:検査によって得られた画像の読影や放射線治療を行う
- 放射線看護師:放射線を含む検査室全般の看護を行う
放射線科の主な仕事内容は検査で得られた画像を解読及び評価する読影です。
脳外科であれば脳など専門科の部分の画像を評価することは可能ですが、それ以外の部位を撮影した際に放射線科医に読影を依頼することが多いです。
また、MRI(磁気共鳴検査)などX線を使わない検査の画像評価も一任されていることが多く、近年は画像診断医と呼ばれることも増えてきています。
反対に透視を使った検査や治療に関しては放射線科医のみでなく、各科の専門医が行うことが多いです(図1参照)
例で言えばERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)などが当てはまります。
ERCPは内視鏡で十二指腸乳頭まで到達した後、造影剤と透視を使って胆管や膵管を描出し、カテーテル等のデバイスを用いて治療を行います。
透視を使った治療になりますが、内視鏡の技術は日々内視鏡検査を行っている消化器内科の方が優れていることが多いため、ERCPも同様に消化器内科または消化器外科が行います。
放射線看護師の仕事
放射線看護師の仕事は比較的幅広く、各病院によって異なりますが大まかな仕事内容は以下の通りです。
心臓カテーテル室 | 心臓カテーテル検査および治療全般に携わる看護師 |
血管造影室 | 脳血管からシャント、下肢の血管など血管に関する検査および治療に携わる看護師 |
透視室 | 透視下検査・治療に携わる看護師 |
MRI室 | MRI検査に携わる看護師 |
CT室 | CT検査に携わる看護師 |
RI室 | RI(核医学)検査に携わる看護師 |
放射線治療室 | ラジエーションと呼ばれる癌に対する放射線治療に携わる看護師 |
放射線科看護師の兼務
放射線科看護師は放射線を主として担いますが、基本的には兼務していることが多いです。一例としてMRI検査などがあります。
MRIは磁気共鳴によって画像を描出する検査です。特に放射線を使う検査ではないですが、検査室の中にMRIが含まれていることが多いため、放射線科看護師が兼務することが多いです。
その他にも、内視鏡を兼務することや手術室、手術室や救急外来との兼務など様々な部署と一緒に仕事することも多くあります。
仕事のスケジュール
放射線科の1日の流れは以下のようになります。今回は一例として日勤帯(8時30分~17時30分)での活動を紹介していきます。
8時30分~ | 勤務開始 |
8時30分~ 9時00分 | 検査の準備 |
9時00分~12時00分 | 検査の介助 |
12時00分~13時00分 | お昼休憩 |
13時00分~16時30分 | 検査の介助 |
16時30分~17時30分 | 翌日の準備 |
17時30分 | 勤務終了 |
検査の準備に始まり検査の準備(翌日)で終わることが多いです。
休憩は流動的であり、隙間時間や交代できる人と代わりながら入っていくことになります。
また、手術室とは異なり一つの検査の時間が30分から1時間程度と比較的短いです。そのため、検査の介助の間で次の検査の準備や退室・入室・記録などを行う必要があります。
Nurse
検査を滞りなく進められるように介助することや検査と検査の隙間時間を効率よく使うことが大切になってきます。
放射線看護師と被曝
Nurse
放射線科看護師は被曝するのではなかと心配されることが多いので、被曝についても説明していきます。
放射線による被曝は時々、取り上げられますが被曝の程度と障害については環境省が早見図を掲載しています。
- 人間においてmSvとmGyはほぼ同等
- Gyは線量であり、Svは人間に当たった量を示す
この表にあるようにCT検査や心臓カテーテル、放射線治療などは非常に被曝による影響が大きいです。
そのため、日頃から携わる医療従事者には被曝による影響を示唆して対応策を行っています。
放射線防護服
放射線科のスタンダードな対応策として防護服の着用があります。防護服は放射線を通さない鉛で作られており、防護服の中は放射線の影響を受けない仕組みになっています。
また、放射線を比較的近距離で浴びることの多い医師などは、放射線の影響を受けないゴーグルやネックガード(首巻き)も装着し対応します。
放射線防護服のメリットは着るだけで被曝の影響を抑えられる点です。逆にデメリットとしては比較的重たいことや、防護服以外の場所は被曝の影響を受けることです。
そのため、線量の高い検査(CT検査やカテーテル検査)の際は放射線を使用する時のみ室外に出たり、防護板などで被曝を最小限に抑えるよう対応します。
線量の計測
放射線に従事する医療者は放射線の線量を計測するバッジを付けています
バッジは主に頭部と腹部または胸部の2箇所付けます。防護服の外側に頭部用、内側に胸部または腹部用をつけることで、防護服内外の線量を計測しています。
バッジから算出する被曝量は毎月レポートとして確認することができます。
定期検診
放射線看護師は放射線暴露のため眼科受診など、定期的な職場の健診に追加して検査されます。
その際に、バッジから確認する被曝量もチェックして適切な放射線業務を行うことができているか確認されています。
妊娠への対応
放射線の被曝は照射時期や線量によって影響が異なります。胎児への影響としては、胎芽・胎児死亡や奇形、先天性の発育おのび精神遅滞、悪性腫瘍、遺伝的影響など様々な障害が挙げられます。
しかし、重要な点はその閾値が100mGyであることです。日本放射線科学会では胎児と放射線の関係を以下のようにまとめています。
- 100mGy以下の胎児線量では、放射線被ばくによる医学的な正当性はない
- 多くのX線診断や検査による出生前の被ばく線量では、出生前死亡・奇形・精神発達障害のリスクが増加して、自然発生率を上回ることはない
- 100mGy以下の胎児線量での放射線誘発の小児がんや白血病のリスクは、自然バックグラウンドレベル(人工的な放射線被ばくがない)群と比べ、ほとんど差はない
- 遺伝的影響については、現在までのところ人間では発生していない
- 両親のいずれかが、妊娠以前に生殖線への放射線被ばくがあったとしても、生まれてくる子供に、悪性新生物または奇形が増加するという科学的な根拠は認められていない
- 撮影部位に限局して放射線を使用するため、胎児がX線に入らない検査において、胎児の被ばくはほとんどない
- 妊娠に気づかないような妊娠早期の放射線被ばくでは、胎児への放射線の影響が極めて低いことが判明している
上記内容から被曝の危険性は極めて低いとされていますが、リスクは伴うので心配ではあると思います。
上記表で確認すると、心臓カテーテル検査は1Gy以上であり、CT検査も10mGy程度あります。防護服を着用するためそれ以下の被曝量にはなりますが、何度も重ねると被曝の影響を受ける可能性はゼロではありません。
そのため、妊婦の方には放射線の影響を受けない仕事ができるように配慮されています。
妊婦が行うことの多い業務
- 検査の準備・介助
- MRIなど透視以外の検査
- CT検査
- 他部署(兼務している場合)
CT検査は放射線量自体は多いものの、撮影時は室外に出ているため被曝の影響は受けません。
放射線による被曝は放射線科看護師としては懸念される事項ですが、妊娠しても配慮があるため特に継続して仕事を続けることができます。
放射線看護師のやりがい
放射線看護師を目指す上で、やりがいに感じることや魅力について説明していきます。
放射線看護師は病棟と比べて分野が幅広いです。放射線の被ばくだけでなく、検査の注意点や介助する上でのポイント、検査に必要な物品の把握なども理解しておく必要があります。また、放射線と一色単に括っていても、その中には消化器の検査や泌尿器の検査、心臓カテーテルなどカテーテルを扱う検査や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などの内視鏡を扱う検査もあります。
そのため、様々な診療科について経験し学ぶことができる点ではとてもやりがいのある部署だと思います。放射線科としての検査や治療を知ることで病態の理解が深まることも多くありました。
また、近年は放射線による診断や治療が非常に進んでおり、手術を必要としていた治療もIVRで行うことができるようになってきています。医療の進歩に伴い放射線科のニーズはより幅広くなっていくため、放射線看護師となることで、より新しい医療を知ることができる可能性が高いです。
まとめ
放射線看護師を希望する看護師は比較的少ないですが、心臓カテーテルやアンギオグラフィー(血管造影)、非血管系IVRなど幅広く業務をこなす縁の下の力持ちです。
被ばくの対策なども年々重要性を増してきており、妊婦にも配慮した対応を行っている病院も少なくありません。
放射線業務を理解し疾患に対する画像診断や放射線検査・放射線治療を学ぶことは、看護師としての能力向上により多く貢献できます。放射線検査や治療・IVRなどに興味がある方にはぜひおススメの部署です。