導入
夏になり特にこのジメジメした時期になると雨上がりにムカデはやってきます。
家にムカデが出た事も何度かありますが、出るたびに、恐怖と戦いながら撃退します。
私自身噛まれた事はないですが、ムカデに噛まれて受診して来る方が時々いるのでご紹介します。
補足 ムカデの撃退方法
私の撃退方法のオススメは熱湯です。
沸騰したお湯をムカデにかけると間違いなく撃退できます。
瞬間氷結スプレーなどでも撃退できますが、スプレーを近づける必要があったり、スプレーが効くまでは動き回ったり、室内では使えないなど用法が限られる為、お湯をかけることが出来る場合はお湯をお勧めします。
※お湯を沸かしている時に逃げられないように注意して下さい
100ml程度の熱湯で十分、ムカデは撃退できます。
撃退にオススメのスプレーは瞬間凍結スプレーです。-85℃で瞬間凍結させる優れ物です。
臭いも他のスプレーより気になりにくく、換気をしていれば室内でも比較的使いやすいです。
実際にムカデに使用しましたが撃退できました。
噴出短いと表面が凍る程度で撃退できないので、出来るだけ近くで長めに噴出して下さい
ムカデに噛まれた時の対応
Nurse
ムカデに噛まれた時
皆さんはどうしますか?
んー、心配なので
受診しちゃいます
ネットでも色々出てきますが、1番議題に挙がる点は温める、冷やすどちらが良いかという点です。受診の必要性も含めて医師に聞いてみました。
ムカデに噛まれた時は温める
ムカデに噛まれた時は温める方が良いみたいです。
しかし、温める際にもポイントがいくつかあります。
- 温度は43℃以上で温める
- 目安の時間は15分くらい
- 噛まれてから遅くても1時間以内に行う
ムカデの毒素は約43℃以上で毒性が下がるそうです。傷口をよく洗い43℃以上で15分程度温めましょう。
注意事項
43℃以上であれば毒性が失活しやすいですが、それより低い温度だと、血管が拡張し逆に毒が回りやすくなります。
また、血管透過性も亢進するため腫脹(腫れ)も大きくなります。
※血管透過性とは
血管の外にある毒を出そうとして血管から毒を倒す物質が滲み出てきます。
この機序により腫脹や一緒に出て来るブラジキニンという物質などにより痛みを感じます。
噛まれてから時間が経った時は冷やす
ムカデに噛まれてから時間が経過し大きく腫れ上がった場合には冷却しましょう。
冷却することで血管拡張や血管透過性亢進を抑え、腫脹を軽減できます。
温めると前述したとおり血管が広がり逆効果になります。
ムカデに噛まれた際の受診の目安
受診が不要な場合
- 症状が発熱・倦怠感・疼痛・腫脹のみ
刺された直後に心配になって受診する方が多くいますが、ムカデに刺された場合の治療は基本的に対症療法です
病気に伴う症状を和らげる、あるいは消すための治療です。
国立がん研究センター
そのため、刺された直後に来ても症状がなければ塗布薬を塗るくらいで、出来ることは少ないです。
受診が必要な場合
- 呼吸器症状(気道狭窄・呼吸困難)が出ている
- 傷口が化膿している
- 成人で嘔吐や目眩(めまい)が見られる
- 子供
- 腫脹・疼痛以外の症状が出現している
(発熱・倦怠感・嘔気・嘔吐・目眩)
アナフィラキシー症状の出現と毒による随伴症状には注意が必要です。
アナフィラキシー
アナフィラキシーとは抗原に対してIgE抗体の過剰反応することによって全身に起こるアレルギー反応ことです。
Ⅰ型アレルギーの一種で、全身の掻痒感・蕁麻疹、重度になると気道狭窄や呼吸困難、稀に意識障害や心停止を脅かす危険な症状です。
Nurse
アナフィラキシーは特に『緊急度』の高い病態です
この場合には迷わず救急車を呼んで受診しましょう。
全身の蕁麻疹のみで呼吸器症状が出ていない時も、悪化するリスクがあります。
特にアナフィラキシーは二峰性と言われ、一度症状が消失しても約24時間以内に症状が再燃する可能性があります。
毒による随伴症状
傷口から毒が侵入すると血管透過性の亢進と共に血管内に毒が侵入する場合があります。
その場合には脳などの神経系に毒が回る事で嘔気・嘔吐・目眩などの症状が現れます。
また、発熱や倦怠感も体温調節中枢の異常や傷口に対する炎症反応によって出現する事があります。
嘔吐には制吐剤を投与し対症療法は可能ですので、症状が強い場合は受診をオススメします。
その他受診のPoint
子供は重症化しやすいと言われている為症状が現れたら早めに受診をすると良いです。
また、傷口が化膿してきた場合にも、毒とは関係なく、傷口に付着した菌により炎症を起こしている可能性があるので受診しましょう。
主な治療法
刺傷部位
ステロイド&抗生物質&(抗ヒスタミン薬)
- リンデロンVG(ベタメタゾン吉草酸エステル+ゲンタマイシン)
ステロイドと抗生物質が配合された薬剤でムカデに噛まれた部分に塗布する事で抗炎症、抗菌作用を示します。
市販で売っているベトネベートN軟膏ASがリンデロンと同じベタメタゾン吉草酸エステルとフラジオマイシンと呼ばれる抗生物質が配合されているため、ドラッグストアで買うなら1番近い商品かと思います。
- レスタミン
抗ヒスタミン薬は掻痒感に効果ありますが、必ず掻痒感が生じるわけではない為、必要時の処方で問題ありません。
嘔気・嘔吐
制吐剤
- テルペラン/メトクロプラミド
嘔気・嘔吐に用いる定番的な薬です。
目眩
- 特になし
目眩の薬は一般的にはメイロンやビタミン剤などが使われますが電解質の是正や末梢神経系に作用するものなので、毒に対しては効果が薄いみたいです。
その為、解毒されるまで安静にして、嘔吐などの症状が併発した場合には制吐剤などで対応します。
夜間の受診
日中は近くの皮膚科に受診すれば良いですが、夜間に噛まれた時は困ります。
特にムカデは夜行性なので夜に噛まれる方が確率としては高いと思います。
夜間に噛まれた場合には症状が疼痛・腫脹のみの場合は受診はオススメできません。
夜間受診のデメリット
クリニックなどは日中のみの診療のため夜間に受診できる病院は限られています。
夜間に受診できる病院は救急車を受け入れている二次または三次救急指定病院です。
その為、夜間はアナフィラキシーなどの緊急性の高い症状を有していない限りは、その他の緊急の患者さんを優先する為、待ち時間が長い場合が多いです。
また、夜間に常勤している医師の数も手薄で皮膚科の医師はいない為、医療の質も緊急の処置に留まります。
実際にムカデに噛まれて受診してくる患者さんの大半がリンデロンVGのみを塗布し帰宅します。
近くの薬局が開いていれば、薬局に問い合わせてベトネベートN軟膏ASを探してみるのも一つの方法だと思います。
まとめ
- 噛まれた直後は43℃以上で温める
- 時間が経過した場合は冷却する
- アナフィラキシーの時は即受診
- 夜間は可能な限り自宅で対応
ムカデに噛まれた時、慌てる事も多いと思いますが、落ち着いて対応して下さい。夜間は特に長い待ち時間の後、救命医が薬を塗って診察は終わります。
料金も夜間料金で高い事があるので、局部(噛まれたところのみ)症状であれば自宅で対応して、翌日、必要であれば皮膚科に受診することをオススメします。
1番は、ムカデに噛まれない事が1番ですね。熱湯とスプレー両方状況に使い分けてやってみて下さい。
おまけ コウモリに噛まれた
私は一度だけコウモリに噛まれて受診してきた人と出会った事があります。
コウモリなんて身近にいない人は安心して大丈夫ですが、夜間などに少しでも見かける方は気を抜かないでください。
時折家に入ってきて、逃す過程で噛まれることがあるみたいです。
コウモリに噛まれて怖いのは破傷風と狂犬病です
破傷風
破傷風とは破傷風菌による感染症で土壌などで怪我した際に発症する可能性のある病気です。
発症すると脳炎や呼吸困難など全身症状を引き起こし命に関わる可能性もある非常に危険な病気です。
破傷風に関してはワクチンの接種義務があるため、幼少期に打ってはいると思いますが、破傷風の抗体は年月と共に自然と減っていきます。
ワクチンを投与してから年月が経っている場合には受診して破傷風のワクチンを打ってもらっても良いと思います。
狂犬病
狂犬病とは人獣共通感染症であり、発熱などの感染症状から出現し、現在の医療では発症すると100%命を落とします。
狂犬病に関しては輸入症例(海外からの帰国者など)以外の発症例は長い年月見られていないことから可能性としては極めて低いです。
コウモリに噛まれた直後では狂犬病の症状は発症しませんし、実物がなければ狂犬病をコウモリが持っていたかわからない為、施せる治療は基本的にないです。
万が一、噛まれた後日体に異変を感じたら即座に受診しましょう。