Nurse
本記事では特定看護師とナースプラクティショナーと呼ばれる診療看護師(NP)についてまとめています
近年話題に上がることの多い特定看護師と診療看護師ですが、違いが分からない方も多いと思うので比較していきます
特定看護師とは
特定看護師とは2015年に創設された特定行為に係る看護師の研修制度の略称であり、研修の一部であり資格ではありません
そのため、大きな特徴として資格の更新が必要ないことが挙げられます
受講後は資格ではないため期限等はなく、永続的に研修による能力を行使することができます
特定看護師公式ホームページ↓
特定看護師ができること
特定看護師は看護師が手順書により特定行為を行う場合に特に必要とされる実践的な知識及び技能の向上を図るための研修であり、区分ごとに取得できる技能が異なります
- 手順書(医師の指示)が必要
- 区分によって取得できる技能が異なる
特定行為とは以下のようなものがあり、21区分に分けられます
呼吸器(気道確保に係るもの)関連
- 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連
- 侵襲的及び非侵襲的陽圧換気の設定の変更
- 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
- 人工呼吸器からの離脱
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連
- 気管カニューレの交換
循環器関連
- 一時的ペースメーカの操作及び管理.リードの抜去
- 経皮的心肺補助装置の操作及び管理
- 大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
心嚢ドレーン管理関連
- 心嚢ドレーンの抜去
胸腔ドレーン管理関連
- 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
- 胸腔ドレーンの抜去
腹腔ドレーン管理関連
- 腹腔ドレーンの抜去
瘻孔管理関連
- 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
- 膀胱ろうカテーテルの交換
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連
- 中心静脈カテーテルの抜去
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連
- 末梢留置型中心静脈注射用カテーテル(PICC)の挿入
創傷管理関連
- 褥瘡または慢性損傷の治療における血流のない壊死組織の除去(デブリードマン)
- 創傷に対する陰圧閉鎖療法
創部ドレーン管理関連
- 創部ドレーンの抜去
動脈血液ガス管理関連
- 直接動脈穿刺法による採血
- 橈骨動脈ラインの確保
透析管理関連
- 急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
- 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
- 脱水症状に対する輸液による補正
感染に係る薬剤投与関連
- 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
血糖コントロールに係る薬剤投与関連
- インスリンの投与量の調整
術後疼痛管理関連
- 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整
循環動態に係る薬剤投与関連
- 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
- 持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
- 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
- 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
- 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連
- 抗けいれん剤の臨時の投与
- 抗精神病薬の臨時の投与
- 抗不安薬の臨時の投与
皮膚損傷に係る薬剤投与関連
- 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整
パッケージ研修とは
パッケージ研修とは上記区分の中の特定行為を一括りにした研修を指します
パッケージ一覧
- 在宅・慢性期領域
- 外科術後病棟管理領域
- 術中麻酔管理領域
- 救急領域
- 外科系基本領域
- 集中治療領域
複数のパッケージにかかる特定行為や、区分の中でも免除可能な特定行為もあるため自分に適したパッケージの内容を探す必要があります
領域パッケージにおける免除可能な特定行為↓
https://portal.tokutei-nurse-council.or.jp/uploads/media/2020/03/20200310163858.pdf
特定看護師になるために
特定看護師の募集している病院は以下のURLから探すことができます
特定看護師になるためには条件.金額.期間などがマッチする必要があります
特定行為の内容やパッケージの種類によって差はありますが、大まかな条件は以下の通りです
- 研修期間:12ヶ月が基本(特定行為によって異なる)
- 受講料:約20万〜70万程度
- 受講資格:経験年数3〜5年以上など
- 更新:不要
研修内容
研修内容は共通科目で315時間、区分別科目で15~72時間と定められていますが、研修の工程は病院によって様々なため期間が大きく変わります
研修内容は大きく分けて4種類です
- eラーニングによる自宅学習
- 集合研修
- 臨床実習
- 筆記試験
特定行為研修のスケジュール
研修における大まかなスケジュールを一例として紹介します
各研修期間においてスケジュールは異なるのでご承知ください
例:救急パッケージ.研修期間12ヶ月
時間 | 内容 |
4月 | 開講式 研修(1日) |
5月 | 研修(計2日) |
6月 | 研修(4日間) |
7月 | 研修(2日間) |
8月 | 研修(1日) |
9月 | 研修(3日間) 試験(2日間) |
10月 | なし |
11月 | 研修(計2日) 研修(3日間) 実習↓ |
12月 | 実習(1項目2日間) |
1月 | 実習(計18日間) |
2月 | 実習(11月〜3月) |
3月 | 実習↑ 試験(2日間) 閉講式 |
月に数回の研修と3ヶ月間の間に十数日の実習、その他はe-learningによる学習を行っていきます
診療看護師(NP)とは
診療看護師/ナースプラクティショナー(Nurse Practitioner:NP)とは大学院の修士課程において、医学の知識と初期医療に関する実践を修了した看護師を意味します
欧米では50年ほど前から上級看護師として診療看護師(NP)の制度を導入していましたが、日本では平成20年より大分県立看護大学大学院で診療看護師の教育が始まりです
診療看護師ができること
診療看護師ができることは特定看護師同様に21区分に含まれる特定行為です
診療看護師の資格を取得すると21区分の特定行為のうち、全てまたは大部分を実施できるようになります
また、診療看護師は直接指示による相対的医療行為(気管内挿管.胸腔穿刺など)も行うことができるのが大きな特徴です
医療行為には相対的医療行為と絶対的医療行為が存在
- 相対的医療行為(診療看護師が行える行為):気管内挿管.胸腔穿刺.腹腔穿刺.手術の介助など
- 絶対的医療行為(医師のみが行える行為):手術の執刀.診断など
診療看護師の専攻領域
診療看護師の資格を取得するにあたって専攻する領域が3つに分けられます
分野を深めるためのものであって、資格取得後の方針を定めたり、行える特定行為差が出たりすることは特にないです
- プライマリ・ケア(成人・老年)
- プライマリ・ケア(小児)
- クリティカル
診療看護師になるために
診療看護師になるには経験年数及び大学院への進学が必須となります
診療看護師になるための流れは以下のステップです
- 看護師免許を取得し、5年以上の臨床経験を積む
- 日本NP教育大学院協議会認定の診療看護師教育課程を有する大学院へ進学する
- 所定の単位を取得後に試験を合格し卒業する
- 日本NP教育大学院協議会が実施するNP認定試験を合格する
Nurse
診療看護師になるためには免許取得後から最短でも7年必要になります
また、更新は5年ごとに必要なため、取得後も実践と実績を残すなど診療看護師としての成果を示す必要があります
金額は入学金と授業料の総計が約200〜270万必要となり、加えて諸費用がかかります
診療看護師を養成する大学一覧
診療看護師を受け入れている大学は全部で15校あり今でも少しずつ増えています
大学一覧は以下の通りです
- 北海道医療大学大学院(北海道)
- 秋田大学大学院(秋田県)
- 山形大学大学院(山形県)
- 東北文化科学大学大学院(宮城県)
- 東京医療保険大学大学院(東京)
- 国際医療福祉大学大学院(東京)
- 佐久大学大学院(長野県)
- 富山大学大学院(富山県)
- 大阪大学 大学院(大阪府)
- 大阪医科薬科大学大学院(大阪府)
- 森ノ宮医療大学 大学院(大阪府)
- 公立 島根県立大学(島根県)
- 愛知医科大学(愛知県)
- 藤田医療大学(愛知県)
- 大分県立看護科学大学(大分)
特定看護師・診療看護師の比較一覧
特定看護師 | 診療看護師 | |
医療行為 | 特定行為のうち限定された部分 | 特定行為のうち全てまたは大部分 |
業務経験年数 | 決まりなし(3〜5年が大半) | 5年以上 |
取得資格 | なし | 日本NP教育大学院協議会認定資格 |
取得場所 | 大学.病院などの教育機関(病院が多い) | 大学院(修士課程) |
教育期間 | 約12ヶ月 | 2年 |
試験 | あり | あり |
料金 | 30〜70万円程度 | 200〜270万円程度(入学金.授業料) |
給与 | 増大 | 増大 |
更新 | 不要 | 5年ごと |
まとめ
選択するポイント
- 期間や金額で選ぶなら特定看護師
- 特定看護師は更新不要
- 特定行為に幅を広く持ちたいなら診療看護師
- 診療看護師は直接指示による相対的医療行為も可能
- どちらを取得しても給料はアップ
診療看護師と特定看護師それぞれに特徴があります
診療看護師へは5年以上の臨床経験と大学院卒業の必要があり、道のりが長いと感じるのであれば必要な特定行為のみ取得する選択も十分価値があると思います
特定看護師も診療看護師も知名度がまだ低く情報が錯綜していたり、不足していることも多いのでチャレンジを考えているのであれば積極的に自分に合う方法を探してみてください