はじめに
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ここでは、胆嚢・胆道疾患に対する手術の手順をポイントを踏まえて紹介していきます
今回は手術の術式や大まかな方法のみでなく、手術の際に使われる器械や流れを解説していきます
手術室看護師や手術看護に携わる職種、手術を受けられる人などが少しでも手術に対してイメージがつき、少しでも安心して手術を実施できることを目的としています
- 手術は施設によって方法や手術時間が大きく異なりますので、目安として参考にしてください
- 特に閉創や創部保護などは大きく異なることが多いです
- 手術の方法などは医療の進歩に伴い変わっていくことが多いです。可能な範囲で訂正はしていきますが、変更できていない場合はご了承ください
- 通常と異なる場合を除いて、消毒やドレーピング、準備過程における手技は割愛しています
この一冊で手術看護の基礎が分かる↓
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麻酔・手術看護の全体像・手術に必要な解剖学全て分かるオススメの一冊です!
腹腔鏡下胆嚢摘出術
- 腹腔鏡を用いて胆嚢を摘出する手術
- ポートからデバイスを挿入し、摘出するため傷が開腹手術と比べて小さい
- 開腹手術より出血が少ないが、ポートからの手技になるため時間は長くなることが多い
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ラパコレと言われる手術の手順です。最近は緊急であっても癒着や炎症が激しい場合を除き、ラパ(腹腔鏡)で行うケースがほとんどです。
腹腔鏡手術では常に開腹手術になることを想定しておくと、緊急時にスムーズな対応ができます。
腹腔鏡下胆嚢摘出術の概要
疾患 | 胆嚢炎.胆嚢癌 |
体位 | 仰臥位 |
手術時間 | 2時間〜3時間程度 |
出血量 | 50ml以下 |
麻酔方法 | 全身麻酔.神経ブロック.硬膜外麻酔 |
腹腔鏡下胆嚢摘出術の手順
開創〜ポート造設
ここで使用するもの
- 有鉤鑷子.メス(尖刃).コッヘル
- 筋鈎.電気メス
- ポート(12mmカメラポート.5mmのポート2〜3本)
- 有鉤鑷子にて把持しメス(尖刃)にて皮膚切開
- その後、コッヘルにて創部把持し創部展開
- 必要時、筋鈎で術野確保し、電気メスにて創部拡大
- ポートの内筒と外筒をセットしてポート挿入(気腹の三方活栓はOFFしておく)
- 内筒を抜去してカメラ挿入後、気腹開始
- カメラポートは12mm.メインポート.サブポートはそれぞれ5mmが多い
- ポートの外筒を皮膚に当ててポート挿入部位に跡をつける(マーキング)
- メス(尖刃)にて皮膚切開しポート挿入
- メインポート.サブポートそれぞれ造設する
ポート造設〜胆嚢剥離
ここで使用するもの
- 鉗子以外の器械は全て不要
- 腹腔鏡光学視管(10mm)
- 腸鉗子.ケリー鉗子.ワニ口鉗子
- 剥離器械(エンドパスサージェリー フック型など)
- ポート造設後はカメラにて腹腔内観察
- カメラは綺麗なガーゼでホワイトバランス
- お湯でカメラを温めることで腹腔内との温度差で曇らないようにする
- クリアサイト(曇り止め)使用
- ポートから腸鉗子挿入(把持できるもの)
- エンドパスサージェリーまたはケリー鉗子など剥離できるもので胆嚢管.胆嚢を剥離
胆嚢剥離後〜胆嚢摘出
ここで使うもの
- リガクリップまたはリガマックスはどの体内用結紮クリップ
- ハサミ鉗子
- メモバックなどの回収袋
- リガクリップまたはリガマックスにて総胆管側を2箇所結紮
- リガクリップまたはリガマックスにて胆嚢結側を1箇所結紮
- ハサミ鉗子にて胆嚢切離
- メモバックを挿入し胆嚢を収納後、口を閉じる
- 気腹一時中断し、カメラポートの開創部から袋ごと胆嚢摘出
胆嚢摘出後から手術終了
- 気腹再開し腹腔内観察
- 出血などがないか最終確認
- 気腹終了
- カメラポートの部分は4-0PDSにて閉創し、その他はリキバンド(ダーマボンド)などで接着
- 傷が小さく閉創の時間は短いため、早めに器械のチェックは済ませておく
- カメラポート以外はフィルムドレッシング貼付することもあり
- ガーゼカウントはポート抜去前.ポート抜去後.閉創終了前
腹腔鏡下胆嚢摘出術(単孔式)
- 腹腔鏡下胆嚢摘出術(単孔式)とは臍部に小切開し、そこから蓋のある創縁保護器具(ラッププロテクター)を用いてポートを増設する
- ポートから鉗子を挿入することで胆嚢を摘出する
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小切開1つで実施できることやメモバックのような袋を入れずに直接取り出すことが可能な反面、1箇所から鉗子やカメラを入れるため多角的な操作が困難なことがあります。
腹腔鏡下胆嚢摘出術(単孔式)の概要
適応疾患 | 胆嚢炎.胆嚢癌 |
体位 | 仰臥位 |
手術時間 | 2時間〜3時間程度 |
出血量 | 50ml以下 |
麻酔方法 | 全身麻酔.硬膜外麻酔.神経ブロック |
腹腔鏡下胆嚢摘出術(単孔式)の手順
開創〜ポート造設
ここで使用するもの
- コッヘル.有鉤鑷子.メス(尖刃)
- 筋鉤
- 電気メス
- ペアン(必要時).ミクリッツ(必要時)
- 蓋付きの創縁保護器具(ラッププロテクター).ポート3〜4個
- コッヘルの先にイソジン綿球をつけて臍を消毒(使用後のコッヘルは不潔扱い)
- 有鉤鑷子またはコッヘルにて把持
- メス(尖刃)にて皮膚切開
- その後、コッヘルにて創部把持し創部展開
- 電気メスにて創部拡大し粘膜を把持する場合はペアン.脂肪組織が厚い場合はミクリッツなどを使って把持する
- ラッププロテクターにて創部保護
- 蓋に内筒で穴を開けた後、ポートを挿入してラッププロテクターに装着
- 蓋に刺さるポートの数は約3個程度
- カメラポート.メインポート.サブポートそれぞれ5mm
- 加えてポートの内筒で小さく穴を開けて直接ワニ口鉗子などを入れることもある
- 正中切開のみでは困難な場合はもう1箇所ポート増設する可能性もあり
・気腹開始
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胆嚢を操作するためには以下の四つの役割が必要なことが多いです。
・術野を見るためのカメラ
・胆嚢を引っ張って胆管を見やすくする把持鉗子
・剥離部位近位の把持鉗子
・剥離を行うためのデバイス
ポート造設〜胆嚢剥離
ここで使用するもの
- 鉗子以外の器械は全て不要
- 腹腔鏡光学視管(5mm)
- 腸鉗子.ケリー鉗子.ワニ口鉗子
- 電気メス/剥離器械(エンドパスサージェリー フック型など)
- 超音波凝固切開デバイス(ハーモニックなど)
- カメラポートから造設し、造設後はカメラにて観察
- カメラは綺麗なガーゼでホワイトバランス
- お湯でカメラを温めることで腹腔内との温度差で曇らないようにする
- クリアサイト(曇り止め)使用
- ポートから腸鉗子挿入(把持できるもの)
- エンドパスサージェリーまたはケリー鉗子など剥離できるもので胆嚢管.胆嚢を剥離
剥離の方法
大まかに剥離の方法を分けると以下の通りです
- 胆管周囲や細かい部分の剥離:細かい操作ができる剥離デバイス
- 胆嚢-肝臓接地面(主に真っ直ぐな部分):超音波凝固切開デバイス
- 胆管周囲(胆管裏側など):直角ケリー.ケリー鉗子
胆嚢剥離後〜胆嚢摘出
ここで使うもの
- ペアン(胆嚢把持して引き上げる)
- リガクリップまたはリガマックスなどの体内用結紮クリップ
- ハサミ鉗子
- リガクリップまたはリガマックスにて胆嚢動脈の総胆管側を2箇所結紮
- リガクリップまたはリガマックスにて胆嚢動脈の胆嚢側を1箇所結紮
- リガクリップまたはリガマックスにて胆嚢管の総胆管側を2箇所結紮
- リガクリップまたはリガマックスにて胆嚢管の胆嚢側を1箇所結紮
- ハサミ鉗子またはハーモニックにて胆嚢切離
- 気腹一時中断し、開創部から胆嚢摘出(必要時ペアンなどで把持し引き出す)
胆嚢摘出後から手術終了
- 気腹再開し腹腔内観察
- 出血などがないか最終確認
- イリゲーションチューブなどで洗浄
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エンドパスサージェリーは電気メスの役割と吸引.送水の三位一体型なので、1つのデバイスで洗浄まで可能です。
- 気腹終了
- 4-0PS(創が深い場合)にて閉創し、臍の部分は綿球とフィルムドレッシングを貼付
- シリンジに27G程度の細い針を刺して中の空気を抜いて密着させる
- 傷が1箇所で閉創の時間は短いため、早めに器械のチェックは済ませておく
- ガーゼカウントはポート抜去前.ポート抜去後.閉創終了前