【手術看護】ヘルニア手術の器械出し手順

手術看護

はじめに

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ここでは、ヘルニアに対する手術の手順をポイントを踏まえて紹介していきます

今回は手術の術式や大まかな方法のみでなく、手術の際に使われる器械や流れを解説していきます

手術室看護師や手術看護に携わる職種、手術を受けられる人などが少しでも手術に対してイメージがつき、少しでも安心して手術を実施できることを目的としています

  • 手術は施設によって方法や手術時間が大きく異なりますので、目安として参考にしてください
  • 特に閉創や創部保護などは大きく異なることが多いです
  • 手術の方法などは医療の進歩に伴い変わっていくことが多いです。可能な範囲で訂正はしていきますが、変更できていない場合はご了承ください
  • 通常と異なる場合を除いて、消毒やドレーピング、準備過程における手技は割愛しています

この一冊で手術看護の基礎が分かる↓

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麻酔・手術看護の全体像・手術に必要な解剖学全て分かるオススメの一冊です!

ヘルニアとは

ヘルニアとは元々ある部位から臓器などが飛び出た状態を示します。鼠径部であれば鼠径ヘルニア.脳が出血などにより圧排された場合は脳ヘルニアと言います。

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今回は鼠径ヘルニアを中心とした腹部に生じるヘルニアに対する手術に焦点を当てています。

ヘルニア手術簡易比較一覧

アプローチ気腹治療メッシュ
TAPP腹腔必要修復必要
TEP腹膜外(腹壁下)必要修復必要
LPEC腹腔+体外必要根治不要
腹壁下(開腹)腹壁下不要修復必要

ヘルニアで使用するカメラ(腹腔鏡)の特徴

腹腔鏡もメーカーや角度などが様々ありますが、ヘルニア手術ではフレキシブルのカメラを使用することが多いです。

経腹的腹膜外修復法/TAPP法

  • 腹腔鏡で行うヘルニア修復術の一つ
  • ポートから腹腔内にアプローチして、ヘルニア部位の腹膜を剥離しメッシュを入れることで修復する
  • メッシュはタッカーまたは縫合にて固定が必要
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Trans Abdominal Pre-Peritoneal repair(TAPP)法は腹腔内からアプローチするため気腹をかけやすく、また、腹腔内全体の観察ができます。

経腹的腹膜外修復法(TAPP法)の概要

疾患ヘルニア
体位仰臥位
手術時間1時間程度
出血量少量
麻酔方法全身麻酔.神経ブロック.硬膜外麻酔

TAPP法では通常の腹腔鏡と同じようにポートを作成し、腹腔内からヘルニアを修復していきます。

経腹的腹膜外修復法(TAPP法)の手順

開創〜ポート造設

ここで使用するもの

  • 有鉤鑷子.メス(尖刃).コッヘル
  • 電気メス
  • ポート(12mmカメラポート.5mmのメインポート2〜3本)
  • 有鉤鑷子て創部把持、メス(尖刃)にて皮膚切開
  • コッヘルまたは細い筋鈎で視野確保、電気メスにて創部拡大
  • ポートの内筒と外筒をセットしてポート挿入
  • 内筒を抜去してカメラ挿入後、気腹開始
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TAPPの場合は腹腔までがポートを挿入するため、TEPと比較すると長いポートを使用することが多いです。

カメラポートは12mm.メインポート.サブポートはそれぞれ5mmが多い

  • メス(尖刃)にて皮膚切開しポート挿入
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事前に皮膚ペンやポートの外筒でマーキングすることがあります。

  • メインポート.サブポートそれぞれ造設

ポート造設〜腹膜切開

ここで使用するもの

  • 鉗子以外の器械は全て不要
  • 腹腔鏡光学視管(10mm)
  • 腸鉗子.ケリー鉗子
  • 電気メス(Aコード付鉗子でも可)
  • ポート造設後はカメラにて腹腔内観察
  • カメラは綺麗なガーゼでホワイトバランス
  • お湯でカメラを温めることで腹腔内との温度差で曇らないようにする
  • クリアサイト(曇り止め)使用
  • ポートから腸鉗子挿入しヘルニア孔を探す
  • ヘルニア孔が見つかったら、周囲組織剥離および腹膜を切開し腹壁下にメッシュが入るよう展開していく
  • 腹膜はメッシュ挿入後に縫合するのに使用

メッシュ挿入〜閉創

ここで使用するもの

  • メッシュ(左右.サイズを確認)
  • 腸鉗子
  • 腹腔鏡用持針器
  • 持針器.針.糸
  • メッシュのサイズを選択
  • ポートからメッシュを挿入し腹壁下で展開
  • タッカーまたは縫合糸で腹壁下に縫合
  • メッシュが広がるのを確認できたら腹膜を縫合し閉鎖する
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TAPPの場合は縫合に加えて腹膜を閉鎖することで圧着されメッシュが固定されます。

  • 気腹を終了しカメラポート抜去

メッシュを入れ始めたらガーゼなど体内留置がないか再確認

  • 閉創しドレッシング剤にて保護

完全腹膜外修復法/TEP法

  • 鼠径ヘルニア修復術の1つ
  • ポートから腹壁と腹腔の間を気腹し、メッシュを入れることでヘルニアを修復する
  • 基本的には縫縮などは行わず気腹を終了することで固定する
  • 腹腔に穴が開くと気腹が漏れるため手術が困難となる
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Totally Extra-Peritoneal repair(TEP)法はお腹の中に入らずヘルニアを修復するため、腹腔内や腹膜を傷つけることなく治療することが可能です

完全腹膜外修復法(TEP法)の概要

疾患ヘルニア
体位仰臥位
手術時間1時間程度
出血量少量
麻酔方法全身麻酔.神経ブロック.硬膜外麻酔

TEP法では腹壁下(腹膜外腔)に炭酸ガスを入れることで視野を確保します。そのため、腹腔内へ穴があると炭酸ガスが漏れて手術が困難となります。

完全腹膜外修復法術(TEP法)の手順

開創〜ポート造設

ここで使用するもの

  • 有鉤鑷子.メス(尖刃).コッヘル
  • 電気メス
  • ポート(12mmカメラポート.5mmのメインポート2〜3本)
  • 有鉤鑷子て創部把持、メス(尖刃)にて皮膚切開
  • コッヘルまたは細い筋鈎で視野確保、電気メスにて創部拡大
  • ポートの内筒と外筒をセットしてポート挿入
  • 内筒を抜去してカメラ挿入後、気腹開始
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TEPの場合は術野が皮膚と近いため短いポートを使用することが多いです。

カメラポートは12mm.メインポート.サブポートはそれぞれ5mmが多い

  • ポートの外筒を皮膚に当ててポート挿入部位に跡をつける(マーキング)
  • メス(尖刃)にて皮膚切開しポート挿入
  • メインポート.サブポートそれぞれ造設する

ポート造設〜腹壁下剥離

ここで使用するもの

  • 鉗子以外の器械は全て不要
  • 腹腔鏡光学視管(10mm)
  • 腸鉗子.ケリー鉗子
  • ポート造設後はカメラにて腹腔内観察
  • カメラは綺麗なガーゼでホワイトバランス
  • お湯でカメラを温めることで腹腔内との温度差で曇らないようにする
  • クリアサイト(曇り止め)使用
  • ポートから腸鉗子挿入しヘルニア孔を探す
  • ヘルニア孔が見つかったら、周囲の組織を剥離していく
  • 腹腔内と違うため癒着も比較的少ないことが多い

メッシュ挿入〜閉創

ここで使用するもの

  • メッシュ(左右.サイズを確認)
  • 腸鉗子
  • 持針器.針.糸
  • メッシュのサイズを選択し、必要時カットして使用
  • 鉗子に巻きつけるように挿入し中で展開し、ヘルニア部分を覆うように当てる
  • 気腹を終了しカメラポート抜去
  • 気腹を終了した内圧で固定するため、縫合やタッカーによる固定は不要
  • メッシュを入れ始めたらガーゼなど体内留置がないか再確認
  • 閉創しドレッシング剤にて保護

腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術/LPEC

  • 鼠径ヘルニア根治術の一つ
  • 小児の手術で非常に多く、陰嚢水腫などに対しても実施
  • ヘルニア孔に糸を通して締めることでヘルニアを治療する
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成人だと術後創部痛を伴う可能性が高いため、子どもまたは若年の女性以外では基本的に行わない手術です。

鼠径ヘルニア根治術/LPECの概要

疾患鼠径ヘルニア.陰嚢水腫
体位仰臥位
手術時間30〜60分
出血量少量
麻酔方法全身麻酔+仙骨硬膜下麻酔または神経ブロックなど

鼠径ヘルニア根治術/LPECの手順

開創〜ポート造設

ここで使用するもの

  • コッヘル(臍消毒用)
  • メス
  • 有鉤鑷子
  • 電気メス
  • モスキートペアン
  • ポート(5mmのカメラポート及びメインポート)
  • 臍をイソジンで消毒
  • 有鉤鑷子で把持して尖刃で切開
  • 電気メスで創拡大し、モスキートペアンで穴を広げる
  • ポートを挿入後内筒を抜いてポート造設
  • カメラを挿入し気腹開始
  • 小児の身体に合わせて使う器械は小さいものを使用
  • ポートは5mmの内径.2箇所増設することが多い
  • 腹腔鏡で腹腔内を観察しヘルニアの場所と鉗子挿入部位を決定
  • 尖刃で皮膚切開しポート増設

ポート造設後〜LPEC

ここで使用するもの

  • LPEC用の針(ラパヘルクロージャーなど)
  • LPEC用の糸
  • 把持鉗子
  • 糸把持(小コッヘルなど)
  • ヘルニアの場所を同定したら、尖刃にて皮膚切開
  • LPEC針を挿入しヘルニア周囲の腹膜内を半周
  • 一度腹腔内にLPEC針を出して糸を残したままLPEC針を抜去
  • ヘルニアの反対側腹膜内にLPEC針を通して腹腔内で糸を収納
  • そのまま糸を収納したままLPEC針を引き抜いて糸を把持
  • ヘルニア全周にかかっていることや血管などを結紮されないか確認後、糸を締めてヘルニア結紮

LPEC針には事前に糸を挟んで収納しておく

LPEC後〜閉創

  • 腹腔内を最終確認しポート抜去(気腹終了)
  • 臍の部分をモスキートコッヘルで把持し4-0PDSにて閉創
  • 臍の部分は綿球とフィルムドレッシングを貼付し、シリンジに27G程度の細い針を刺して中の空気を抜いて密着させる
  • 臍以外の部位は皮膚用接着剤(リキバンド))で固定

臍ヘルニア修復術

  • 臍ヘルニアを防ぐための手術
  • 臍付近を切開してアプローチしメッシュを入れて修復を行う
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臍ヘルニアとはいわゆる出臍(でべそ)のことです。大人の臍ヘルニアは嵌頓する可能性が高く腸への血流障害を起こす可能性もあることから手術することがあります。

臍ヘルニア修復術の概要

疾患臍ヘルニア
体位仰臥位
手術時間1時間程度
出血量少量
麻酔方法全身麻酔.硬膜外麻酔

臍ヘルニア修復術の手順

開創〜ヘルニア露出

ここで使用するもの

  • 有鉤鑷子.メス(尖刃).コッヘル
  • 電気メス
  • ペアン(モスキートペアン)
  • 筋鈎
  • メス(尖刃)にて皮膚切開
  • 臍の上下5センチ程度の正中切開
  • 臍の左側または右側を迂回するように周辺を通り開創する
  • 有鉤鑷子で把持しながら、電気メスにて切開
  • コッヘルにて創部把持し腹壁下(腹膜上)まで切開していく
  • メッシュを入れれるよう創を広げる

臍を含む周囲径でメッシュの大きさを決める

臍周囲をモスキートペアンなどで剥離して露出させる

ヘルニア結紮

ここで使用するもの

  • 電気メス
  • 針と持針器
  • 臍ヘルニアとなる部分を電気メスで切開してヘルニア腔を確認する
  • ヘルニア腔を結紮
  • メッシュで塞ぐため、吸収糸(1 PDSなど)で結紮

メッシュ挿入〜閉創

ここで使用するもの

  • メッシュ(サイズを確認)
  • 生食.鑷子
  • 針.持針器
  • メッシュのサイズを選択し、必要時カットして使用
  • 畳んだ状態で挿入し鑷子などで、ヘルニア部分を覆うように展開する
  • 適切に展開されていることを確認して、閉創
  • ドレッシング剤にて保護
  • 閉創は腹壁と皮下を縫合
  • 縫合部分が分かりやすくなるようにコッヘルなどで糸把持してまとめて最後に切ることもある
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