
Nurse
本記事では眼科手術の麻酔手順を解剖を踏まえて紹介していきます。眼科手術に入る前や復習としてご参考ください。
様々な病院で行われる手術ですが、大まかな方法は決まっているものの、詳細な手順や使用する資機材は病院や手術する医師によって様々です。そのため、あまり参考書以外では詳細部分まで知ることが難しい現状があります。
今回は手術室看護師として実際に行った眼科手術の前段階として、眼科の麻酔方法を解剖生理を踏まえて紹介していきます。
手術室看護師や手術看護に携わる職種、手術を受けられる人などが少しでも手術に対してイメージがつき、少しでも安心して手術を実施できることを目的としています。
- 手術は施設によって方法や手術時間が大きく異なりますので、あくまで参考として紹介しています
- 手術の方法などは医療の進歩に伴い変わっていくことが多いです。可能な範囲で訂正はしていきますが、変更できていない場合はご了承ください。
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眼科の解剖生理

- 眼は主に角膜,水晶体,硝子体で構成
- 水晶体は蛋白質と水分で構成
- 硝子体の99%は水分で構成

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眼科の手術は大きく分けて水晶体の手術(主に白内障など),硝子体手術(緑内障手術など),その他の手術(眼瞼下垂の手術など)に分けられます。その他の手術は基本的に局所麻酔(一般の皮膚に行う麻酔)が多いため、今回は水晶体と硝子体手術における麻酔にピックアップしてお話しします。
眼科で用いられる主な麻酔

眼科で用いられる麻酔は主に点眼麻酔・テノン嚢下麻酔・球後麻酔の3種類です。共通点はどれも局所麻酔のため意識は消失しないです。
眼科の手術は基本的に局所麻酔で行います。局部の手術のため全身に麻酔をして侵襲を与えるリスクや全身麻酔を行うことによる費用と手術時間の延長を防止するなどの効果が有ります。安静が保てない状態や最初から手術時間が長期化する可能性が高い場合(両目の手術,高難度の手術など)には全身麻酔を行う可能性もあります。
点眼麻酔は眼内手術(水晶体手術,硝子体手術)全例に実施します。水晶体手術では追加でテノン嚢下麻酔をすることが多く、硝子体手術ではテノン嚢下麻酔に球後麻酔を併用して行うことが多いです。

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眼科の手術は特に安静が重要です。局所麻酔後も違和感が強かったり、痛みを強く感じる場合には、我慢することなく手を挙げるなどの動作でお伝えください。
点眼麻酔
主な麻酔薬
- オキシブプリオカイン塩酸塩点眼液(ベノキシール)
- 2%リドカイン
点眼麻酔は眼科手術の基本です。手術開始前に点眼薬を使用して麻酔を行います。点眼麻酔のメリットは注射等などによる侵襲性が低いため、全ての眼科手術の導入に重宝されます。
点眼麻酔は薬剤や施設によって異なりますが、消毒前の点眼麻酔と手術開始前の点眼麻酔など薬剤を変えて複数回使用することで、より確実に麻酔の効果を浸潤させていきます。

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私が勤務していた手術室では消毒前にオキシブプリオカイン(ベノキシール)点眼麻酔を3回実施した後に、消毒を実施していました。手術開始前には執刀医よりリドカインの点眼麻酔を実施することで、より確実に麻酔の効果が発揮できるよう配慮を行っています。
点眼麻酔と消毒薬
オキシブプリオカイン塩酸塩点眼液(ベノキシール)による点眼麻酔は基本的に消毒実施前に行います。眼科手術で一般的に使用される消毒薬としてPAヨードなどがありますが、ヨード消毒薬であり麻酔の効いていない眼に入ると滲みて痛みなどを伴う可能性があります。
そのため、施設によっては消毒薬が万が一手術と逆側の眼に入った際のことも考慮し両側の眼に点眼麻酔を実施することもあります。眼科は手術開始までの時間が比較的短いため、点眼が適切に実施できているか消毒前に確認することが大切です。
消毒した後ドレーピングを行い、手術開始直前に2%リドカインで点眼麻酔を再度行います。この時点は既に清潔野での処置になるため、器械だし看護師が準備や介助を行います。
点眼麻酔の流れ
- 手術室入室
- オキシブプリオカイン塩酸塩点眼液(ベノキシール)による点眼麻酔実施(片眼または両眼)
- 手術準備(VS測定器具などの装着,消毒の準備)
- 点眼麻酔完了しているか最終確認(複数回点眼する時は要注意)
- 消毒実施しドレーピング
- 2%リドカインによる点眼麻酔実施
テノン嚢下麻酔

主な麻酔薬
- 2%リドカイン
- 0.75%アナペイン
テノン嚢下麻酔は名前の通りテノン嚢に実施します。水晶体(白内障)手術にも硝子体手術にも使用されます。安全性が眼内麻酔より高く眼内疼痛にも効果が見られるため、使用頻度が特に高い麻酔方法です。
特徴としては有効時間が60分程度と球後麻酔より限定的であることや眼球後方に触れる手術では効果を示さないため球後麻酔が必要となります。
薬剤は球後麻酔と同様ですが、リドカインのみでテノン嚢下麻酔を実施することもあるため、希釈量などは確認が必要です。
テノン嚢下麻酔の流れ
- ドレーピング
- テノン嚢と強膜を剥離しながらテノン嚢下に鈍針を挿入
- 鈍針を赤道部付近(眼球の真ん中)まで潜り込ませる
- テノン嚢下麻酔実施
球後麻酔

主な麻酔薬
- 2%リドカイン
- 0.75%アナペイン
球後麻酔は硝子体の後方に行う麻酔であり、長時間の効力と眼球運動の抑制力が特徴の麻酔法です。麻酔方法は経皮膚法と経結膜法があります。
経皮膚法では鋭針を用いて眼球後方に麻酔を行い、経結膜法は鈍針を用いてテノン嚢下と同様の要領で経結膜的に球後まで針を進めた後に麻酔を行います。
どちらを選択するかは医師の判断によりますが、基本的には眼球を予め麻酔していることなどからも経結膜法を用いることが多いです。
球後麻酔は長時間効力を示すため比較的手術時間が長い硝子体手術に用いることが多いですが、球後出血が起きた際には失明のリスクを伴うため注意が必要です。
薬剤はテノン嚢下麻酔と同様ですが、長時間の手術や球後麻酔を前提に行う場合には、アナペインを用いてより麻酔の効力を高める可能性もあるため、希釈量などは確認が必要です。
球後麻酔(経結膜法)の流れ
- ドレーピング
- 結膜を経由してテノン嚢下まで鈍針を挿入
- テノン嚢と強膜を剥離しながらテノン嚢下に鈍針を挿入
- 鈍針を赤道部付近(眼球の真ん中)から更に奥まで進めて球後まですすめる
- 経結膜球後麻酔実施
まとめ
- 眼科の麻酔は主に点眼麻酔,テノン嚢下麻酔, 球後麻酔の3種類
- 点眼麻酔は全例実施する麻酔で眼球の消毒までに完遂する
- テノン嚢下麻酔は作用時間が短い反面、安全性が高く水晶体(白内障)手術で有効
- 球後麻酔は経皮膚法と経結膜法の2種類
- 球後麻酔は作用時間が長く眼球運動抑制作用があるため硝子体手術で有効であるが、球後出血は失明のリスクがあるため注意が必要
手術看護は専門領域かつ施設によって手技や資機材も異なるため経験が必要になります。しかし、手術の前の事前学習や疾患に対する手術方法などを熟知しておくと、臨機応変に対応が可能です。
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