【薬の看護】術後手術部位感染症(SSI)予防のための推奨抗菌薬の使い分け

手術看護
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術後手術部位感染症(SSI)と抗菌薬

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手術室では手術後の感染症予防として術直前に抗生剤を投与することが多いです。病棟から手術時に持ち込むことも多いと思います。本記事では、手術部位による推奨抗菌薬を一覧にして紹介していきます。

術後手術部位感染症(SSI:Surgical Site Infection)は外科手術合併症の1つです。手術創は清潔操作で開創、手術および閉創を行っていきますが、術後に創部やドレーン留置部、体内挿入物(インプラント)などから感染を引き起こすことがあります。

その予防として手術前に起こり得る感染症を予測して予防抗菌薬を投与します。予防抗菌薬は基本的に手術部位の常在菌に対して抗菌活性をもった薬剤選択を行います。

実際に投与する抗菌薬を手術部位ごとにまとめました。

参考資料

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術後感染症予防のための推奨抗菌薬

手術領域により異なりますが、ターゲットとなる常在菌は主に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌、腸内球菌が対象です。そのため、基本的には上記を抗菌スペクトルとする第一世代セフェム系抗菌薬のセファゾリンが推奨されます。

セファゾリンにアレルギーがある場合にはバンコマイシンやレボフロキサシン、クリンダマイシンが代替薬として用いられます。

領域対象臓器常在菌推奨予防抗菌薬
心臓血管外科心臓.血管黄色ブドウ球菌
レンサ球菌
CEZ
SBT/ABPC
整形外科骨.関節.
筋肉
黄色ブドウ球菌
レンサ球菌
CEZ
SBT/ABP
脳神経外科脳.神経黄色ブドウ球菌
レンサ球菌
CEZ
SBT/ABP
上部消化管食道.胃大腸菌
肺炎桿菌
CMZ
下部消化管回腸.直腸.結腸バクテロイデス属
腸内細菌科細菌
CMZ
FMOX
CEZ+MNZ
胆管膵消化管胆嚢.肝臓.膵臓腸内細菌科細菌CEZ
CTM
耳鼻咽喉科
口腔外科
口腔.咽頭
喉頭
口腔内嫌気性菌
レンサ球菌
SBT/ABPC
FMOX
CMZ
婦人科膣.子宮バクテロイデス属
腸内細菌科細菌
CMZ
FMOX
CEZ+MNZ
泌尿器科尿道.膀胱.尿管.前立腺腸内細菌科細菌CEZ
CTM
CEZ:セファメジン(セファゾリン) CMZ:セフメタゾール CTM:セフォチアム FMOX:フロモキセフ SBT/ABPC:スルバクタム/アンピシリン(タゾピペ) MNZ:メトロニダゾール

推奨抗菌薬の投与するタイミング

術後手術部位感染症(SSI)予防のために手術開始から手術終了後2~3時間まで抗菌薬濃度を適切に保つ必要があります。

推奨される抗菌薬の投与タイミングは手術執刀開始前の1時間以内としています。

バンコマイシンとフルオロキノロン系薬は120分前以内に投与を開始します。

また、整形外科領域などで駆血のためにタニケットを使用する場合は、少なくとも加圧する5〜10分前に抗菌薬の投与を終了する必要があります。

帝王切開では新生児への影響を考慮し臍帯をクランプした後の投与を以前は行っていましたが、現在は母体のSSIや子宮内膜炎などの予防目的で、他の手術と同様に術前1時間以内の投与が推奨されています。

推奨抗菌薬の追加投与するタイミング

手術中は抗菌作用を持続させるため、通常の感染症対策として手術時間が長くなった場合、手術中に追加で投与します。

一般に半減期の2倍の間隔での再投与が行われ、CEZでは3〜4時間ごとであり、その他の抗菌薬はその半減期を参考に再投与を行うことが多いです。

しかし、追加投与する際に注意するポイントがいくつかあります。

  • 一般に半減期の2倍の間隔での再投与であり、半減期を参考に再投与する
  • CEZでは3〜4時間ごとが目安
  • 腎機能低下症例では、腎機能に応じて、再投与の間隔を延長する
  • 短時間に1500mL以上の大量出血が認められた場合、決められた再投与間隔を待たずに追加投与を考慮する

抗菌薬を追加投与する際は上記に当てはまっているかも確認して投与すると良いです。

まとめ

周手術期における感染予防は特に重要な看護の一つであり、清潔操作や創部のケア、感染兆候の観察などを適切に行うことで術後手術部位感染症(SSI)を予防することができます。

術後手術部位感染症(SSI)は患者へ感染に伴う身体的負担や再手術などのリスク、入院費用の増加に入院期間の延長などデメリットが数多くあります。

多くの病院では、クリニカルパスの中に手術室に持ち込む抗生剤のオーダーが組み込まれていることが多いですが、手術時間や体重、手術部位などを考慮して適切な抗生剤がオーダーされているか再確認することも看護師の大切な役割です。

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