【症状別看護】眩暈(めまい)の主要疾患 小脳梗塞

症状別看護
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導入

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めまいの原因となる主な疾患をピックアップしてお伝えします

前回の記事で、めまいの原因疾患が数多くあることは説明しました

その中でも特に覚えておいて欲しい疾患を解剖整理も含めて解説していきます

覚えておいて欲しい疾患は以下の3つです

  • 小脳梗塞
  • メニエール病
  • 良性発作性頭位眩暈症(BPPV)

小脳梗塞は早期に除外したい疾患であり一番最初に鑑別を行います

メニエール病は眩暈を特徴とする疾患としてメジャーなものなので医学的な病態を含めて知って欲しい病気です

良性発作性頭位眩暈症(以下BPPVと略)は発症頻度が高く眩暈で苦しむ人の多くがBPPVのため、ピックアップしました

本記事ではその中でも一番危険な疾患である、小脳梗塞について紐解いていきます

参考資料

病気がみえる 脳・神経

病気がみえる 耳鼻咽喉

医療情報科学研究所の病気がみえるシリーズです。メジャーな疾患からマイナーな疾患まで幅広く記載しています。

小脳の解剖生理

眩暈<br>患者さん
眩暈
患者さん

小脳ってどこにあるんですか?

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小脳は後頭部の下側にあります

小脳は脳の中で後頭部下面に位置し、他の大脳などと同様に頭蓋骨で外部から守られています

重さは約130g.大きさは脳全体の1/10程度となっています

その大きさに反比例して凄いところはその神経細胞の多さです

大脳より遥かに多い神経細胞が、小脳の機能の重要性を物語っています

小脳を栄養する血管は上小脳動脈、前下小脳動脈、後下小脳動脈3つの動脈です

大動脈から椎骨動脈を経由して矢印の部分は到達すると、そこからそれぞれ血管に分岐しており小脳につながっています

この何れいずれかの血管が動脈硬化などが起因で障害(閉塞)されることで小脳梗塞となります

小脳の機能

小脳の役割は主に運動機能の調節です

  • 平衡感覚.バランス感覚の調節
  • 力の入れ具合の調節

小脳は大脳皮質や視床、筋肉などと連携し機能を果たします

小脳は平衡感覚と微細性を司り、それによりバランスを取りながら歩くことや、物を正確に掴むことができます

小脳梗塞の病態生理

好発

好発年齢は中高年で動脈硬化の危険因子または、心疾患を有する人です

動脈硬化の危険因子:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 喫煙.大量飲酒

心疾患としては心房細動を有する場合には心源性の小脳梗塞を疑います

心房細動では心房の細かな揺れにより血流が停滞することで血栓を形成し小脳梗塞を引き起こします

心原性脳梗塞の場合、血栓が大きいことが多いので重篤な臓器障害を起こしやすいです

また、原因の一つとして脳動脈解離があり、40〜50歳代に見られます

好発部位は後下小脳動脈(PICA)灌流域である小脳後下面です

症状

  • 発症は突然のめまい悪心・嘔吐
  • その他頭痛や眼振などの症状が見られる
  • 四肢・体幹の小脳運動失調を認める
  • 構音障害を認める
  • 脳ヘルニアをおこすと意識障害や呼吸停止を引き起こす

小脳は脳幹が近いため、脳ヘルニアで脳幹を圧迫しやすい

小脳梗塞の特徴症状は眩暈と歩行困難です

麻痺が伴うことは少なく、脳梗塞から脳ヘルニアを引き起こすと重篤化するため早期に除外したい鑑別疾患となります

また、麻痺自体は少ないですが運動失調症状は小脳の障害側に出現しやすいです

左側の小脳は右側の大脳皮質、右側の小脳は左側の大脳皮質と連携しており、視交叉を通らないため同側に出現します

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他の脳梗塞は対側に麻痺が出るので注意が必要ですね

小脳梗塞の検査

脳梗塞の検査として一番有力なものとしてMRI(.磁気共鳴画像)があります

MRI

MRIは磁場の働きで体の中の物質に振動を与え、その動きを読み取ったものになります

MRIを用いて血管を描出したものをMRAと言います

このMRIとMRAによって大方の脳梗塞は発見することができます

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ハイスペックなMRIですが

もちろんデメリットもあります

MRIのデメリット

  • 撮影に時間がかかる(30分〜1時間)
  • 閉所恐怖症などがあると撮影が困難
  • 金属を持ち込めない(通常の人工呼吸器やAライン)
  • 体動が激しい場合は撮影が困難

MRIは時間がかかる上、安静が必要な場合やMRI用の簡易的な人工呼吸器に変更が必要など制約が多くあります

そのため、救急搬送された直後でVSが不安定な場合や他の原因疾患が除外できない場合にはCTを第一選択とします

CT

CT検査は筒状の機械の中で全方位から放射線を当てることで立体的な画像を描出できます

CTのメリットはMRIより短時間で施行でき、単純レントゲンより詳細に脳の状態を把握できることです

しかし、脳梗塞に関しては『early CT sign』と呼ばれる超急性期かつ重症な場合に起こるCT変化以外は描出されることが少ないです

特に小脳梗塞の場合、ラクナ梗塞と呼ばれる微小血管の脳梗塞の場合が多いためCTでは検知されないことも多々あります

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脳梗塞が疑わしく、全身状態が落ち着いていたらMRIを優先しましょう

眩暈<br>患者さん
眩暈
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小脳梗塞が疑わしい場合ってどうやって鑑別するんですか?

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疑う要因はいくつかありますが、代表的なものとして指-鼻テストがあります

指–鼻テスト

眩暈を発症する人の大半が頭痛や嘔気・嘔吐を伴います

そのため、自覚症状としての鑑別は困難な場合が多く、指–鼻テストを行うことで小脳失調症状を確認します

指–鼻テストは簡易的かつ道具を必要としない非侵襲的な検査のため、外来でも積極的に行っています

指–鼻テストの方法

  • 必要人数:2人
  • 時間:1分程度

①検者の手が届く程度に離れたところに指を出す

②検者に自分の鼻と出された指を交互に触ってもらい、それを正面、左右側面で繰り返す

この指–鼻テストが円滑に行えない場合には上肢の小脳運動失調により、小脳梗塞を疑います

  • 外来で指–鼻テストを施行
  • 小脳梗塞が疑わしく全身状態が落ち着いてたらMRIを実施
  • 他の疾患を否定できない、または全身状態が不安定であればCTを実施

小脳梗塞の治療

※小脳梗塞の治療は脳梗塞の治療に準ずる

主な治療方法は『薬物療法』に加え『血栓溶解療法』『血栓回収療法』『外科的治療(ドレナージ・開頭術』に分けられます

また、脳梗塞の重要なポイントとなるのは、発症からの時間経過です

それには、『ペナンブラ領域』が密接に関わってきます

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まずはペナンブラ領域について

お伝えします

ペナンブラ

ペナンブラとは日食の時にみられる明るい三日月状の部分(半陰影)を意味する言葉です

脳の血管が閉塞すると閉塞した血管の支配領域は閉塞部位を中心に壊死していきます

虚血が長く続くと支配領域全体の細胞が壊死しますが、早期に再開通することで、周辺組織は可逆的な機能障害で済む場合があります

この可逆性の領域がペナンブラです

このペナンブラ領域をできるだけ多く残しておくために、早期の治療を試みます

血栓溶解療法

血栓を溶かすことで再開通を図ります

使う薬はrt-pa(アルテプラーゼ)/グルトパと呼ばれるもので発症から4.5時間以内であれば適応とされています

rt-PAとは組織プラスミノゲンアクチベータの1つで、血栓上のプラスミノゲンを活性化しプラスミンに変化させることで血栓溶解を促します

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明らかに血が止まらなくなるので気を付けてください

  • 投与は静脈から持続で行う
  • 体重換算で投与
  • 易出血となるため、投与後にVライン挿入など出血リスクを伴うものは避ける
  • 投与開始後は定期的に全身状態を観察

血栓回収療法

血栓回収療法とはカテーテルという管を血栓がある血管まで持っていき直接吸引することで血栓を取り除きます

近年、カテーテルの進歩は目覚ましく血栓回収療法が主流になりつつあります

血栓回収療法に適応時間の明確な決まりはないですが、基本的には24時間以内かつ血栓回収療法の適応範囲であれば施行します

東京都の救急隊は発症から24時間以内の脳卒中を『脳卒中A』と区別しています

血管回収療法の実際

  • 場所:血管撮影室(透視下で行える場所)
  • 施行医師:基本は医師2人以上
  • その他:看護師.放射線技師
  • 時間:2時間程度(血管の走行等による)
  • 麻酔:局所麻酔
  • 穿刺部位:基本的に鼠径部(主に右)

カテーテルは鼠径部に作ったシース(トンネル)から脳動脈に向かい、血栓に吸引カテーテル及び掻き出すためのステントリトリーバーを挿入し血栓を取り除きます

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取り除いた血栓は肉眼で見えるくらいのサイズです

外科的治療・ドレナージ

外科的治療は意識障害を伴い、CT画像で脳浮腫または脳ヘルニアを合併している場合に適応になります

発症から手術までの時間に明確な決まりはありませんが、重要な点は外科的治療により回復が期待されるかです

来院時点で瞳孔散大、対光反射も見られず脳の機能が不可逆的に停止していると判断すれば、水頭症や脳ヘルニアを合併していても外科的治療に踏み込まない場合の方が多いです

外科的治療には『脳室ドレナージ』『開頭減圧術』の2種類があります

脳梗塞における外科的治療の基本は減圧です

圧の程度と緊急度によって治療方針が変わってきます

特に小脳梗塞の場合は脳幹との距離が近いため脳ヘルニアを合併しやすいです

脳室ドレナージ

  • 適応:水頭症に加えて中等度の意識障害が見られる
  • 麻酔:局所麻酔でも可能
  • 手技:頭に穴を開け、水頭症をドレナージする

脳室ドレナージは局所麻酔でも可能であり、手技も簡便かつ短時間で行うことができます

ドレナージ後はドレーンをそのまま留置することで持続的に排液することができます

開頭減圧術

  • 適応:脳幹部の圧迫に加え重度の意識障害が見られる
  • 麻酔:全身麻酔
  • 手技:頭蓋骨を外し減圧する

頭蓋骨は頭を守る役割がある傍ら、頭の中で圧が亢進した場合圧の逃げ場を塞ぎます

そのため、頭蓋骨を外すことで圧を逃します

外減圧後にドレーンを留置することもあります

脳梗塞の薬物療法

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保存的治療になった場合には薬物療法を行います

薬物療法は『抗血栓療法』『抗脳浮腫療法』『脳保護療法』に分けられます

抗血栓療法

  • 抗血小板薬:オザグレルナトリウム.アスピリン
  • 抗凝固薬:アルガトロバン.ヘパリン
  • 効果:血栓溶解及び形成防止

抗脳浮腫療法

  • 抗脳浮腫薬:高張グリセロール
  • 効果:血管内浸透圧を高張にすることで血管外(細胞及び間質)の水分を血管内に引き入れる

脳保護療法

  • 脳保護薬:エダラボン
  • 効果:梗塞後の血流再開時に発生するラジカルを捕えて脳神経を保護する
  • 腎排泄のため、腎機能低下時や透析してる人には使用できない

まとめ

  • 小脳梗塞は時間が重要となるめまい疾患
  • 他のめまい疾患との鑑別は小脳失調症状を見逃さない
  • 急性期治療は血栓溶解療法.血栓回収療法.外科的治療

小脳梗塞はめまいの中でも重症化しやすい疾患のためピックアップしました

めまい疾患の中で最も最初に除外したい項目であるため、神経症状や頭部症状を診察し疑いがあればMRIやCTで精査します

めまいを起こしやすい人は平衡感覚に異常が出ているのかを重要視して捉えると疾患が少しだけ見えてくると思います

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