【循環器看護】心カテのテクニック-KBT(キッシングバルーンテクニック)とは-

心臓カテーテルにおけるKBT 循環/輸液
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はじめに

心臓カテーテルは医師や看護師だけでなく、放射線技師や臨床検査技師、時には臨床工学技士まで参加する他職種が関わる治療です。

そのため、看護師として他職種に任せて良い業務も多くありますが、理解することでより心臓カテーテルを深めることができるのも事実です。

今回は心臓カテーテルのデバイスについて看護師として知識を共有していきたいと思います。

カテーテル関連の医療用語・略語はこちら

心臓カテーテルの基本 CAGを学ぶならこちら

デバイス DCB(薬剤コーデットバルーン)についてはこちら

参考資料

心臓カテーテルの入門です。基礎的な内容をイラスト豊富に分かりやすく記載されており、最初の1冊としては特におすすめです。

デバイスの概要などは書かれていますが、アブレーションの内容や手技の詳細は描かれていないので、よりハイレベルに心臓カテーテルを学びたい方は併せて、より専門的な参考書をオススメします。

KBT(キッシングバルーンテクニック)とは

KBT/Kissing Balloon Techniqueとは心臓カテーテルで実施される手技の一つです。

PCI (経皮的冠動脈インターベンション)の中でも、特に冠動脈分岐部(bifurcation )病変の治療に用いられる手技です。

KBTの手技

KBTのイラスト
※イメージ図です。実際の手技とは異なります

KBTはバルーンカテーテルを同時に2本膨らませる手技になります。

冠動脈入り口から狭窄部位にバルーンカテーテルを留置します。その後、バルーンカテーテルが分岐部にかかっている場合にはもう一本、バルーンカテーテルを挿入し、分岐部付近に留置します。

その後は前述した通り、バルーンカテーテルを2本同時に拡張させKBTを行います。

KBTの手技

  1. CAG(冠動脈造影)などの結果から狭窄部位があり治療(PCI)の方針となる
  2. ガイディングカテーテル挿入
  3. PCI用のGW挿入
  4. バルーンカテーテル留置(本幹用)
  5. バルーンカテーテル留置(分岐部用)
  6. バルーンを同時に拡張(POBA)する=KBT

KBTの特徴

KBTは分岐部の治療で行う手技ですが、ステント留置前とステント留置後によって目的が異なります

ステント留置前(前拡張)の場合は特にプラークシフトの可能性が高い場合に行います。

プラークシフトとはバルーンを膨らませた時にバルーンの圧力で壁にあるプラークが押される現象です。押されたプラークが分岐部に入ると塞栓症を引き起こし心筋梗塞となるため、注意が必要です。

KBTを行うことで分岐部がバルーンで閉塞されるため、プラークシフトを防ぎ合併症を予防することができます。プラークの確認は、高コレステロール(HCL)などのリスクファクターに加えて、IVUS(血管内超音波)で確認することができます。

ステント留置後のKBTにはステントによる血流低下を防ぐ目的があります。

狭窄部位の拡張目的で冠動脈ステントを留置します。ステントは網状ではありますが、多少なりとも血流に影響があります。また、長期留置することでステントにコレステロールなどが沈着し血流低下を引き起こす可能性が高いです。

KBTを行うことで、分岐部に掛かっている網をバルーンで広げ血流を確保することができます。

KBTの注意点

プラークシフトの予防や分岐部の血流確保に有用なKBTですが、実施する際には注意点があります。バルーンを拡張する際には基本的に血流が一時的に低下します。

KBTの場合はバルーンを2ヶ所拡張させるため、一時的とは言え2枝の血管閉塞を起こしていることと同義です。血管閉塞に伴う胸痛などの出現などには注意が必要です。

また、バルーン拡張全般に影響するものですが急な血流再開によって、今まで流れていなかった血管に急激に血液が流れ込んでくるため、壁にくっついていた血栓が剥がれて末梢を閉塞するリスクもあります。

ER Nurse
ER Nurse

看護師としての役割は、胸痛のリスクや出現時の患者さんへの対応や合併症出現時のVS変化の確認などがあります。

おわりに

  • KBT(キッシングバルーンテクニック)とは2本のバルーンを同時に拡張させて分岐部を保護する手技
  • プラークシフトによる塞栓とステントによる血流低下を防ぐことができる
  • 胸痛の出現や末梢の塞栓などの合併症に注意する

心臓カテーテルでは様々な用語や手技が飛び交います。基本の流れが分かっていても、普段と違う過程が入ることで途端に流れが変わり、焦りや不安に繋がります。

KBT(キッシングバルーンテクニック)は医師が行う手技であるため、直接的に関わる部分は少ないです。しかし、バルーンカテーテルが2本続けて出た場合にKBTを連想できることで、塞栓のリスクなどが分かり、看護の質に影響します。

ER Nurse
ER Nurse

心カテの手技を理解することで、看護に繋がります。分岐部でのステント挿入では、ぜひKBTを念頭において対応してみて下さい。

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