初めに

本日は輸液管理の中でも混合液について紐解いていきます。前提の知識として前回の記事でお伝えした内容を再度復習していきます。
メイン輸液の種類
日本では、メインとして投与する輸液は大きく分けて4種類あります。また、補足として高カロリー輸液などもメインとして使われることも多いですが今回は特徴を分かりやすく大別するために割愛しています。
主な輸液は生理食塩水、ブドウ糖液、リンゲル液、混合液です。それぞれの特徴は以下の通りです。
輸液 | 特徴 |
---|---|
生理食塩液 | ・浸透圧が血液と等しくなるよう0.9%濃度に調整した輸液 ・154mEq/LのNa+とCl-で作られている ・KやCaを含まない |
ブドウ糖液 | ・5%ブドウ糖を入れる事で浸透圧を等しくした輸液 ・ブドウ糖は即座に代謝され真水と同等の成分になる ・細胞内脱水や、ルートキープは必要かつ血管内に水分を入れたくない場合に使用 |
リンゲル液 | ・乳酸、酢酸、重炭酸の3種類がある ・効果は主に細胞外液の補給とアシドーシスの改善 ・緊急で輸液が必要な場合の第一選択 |
混合液 | ・生理食塩水とブドウ糖液の混合 |
本記事では、生理食塩水とブドウ糖液を併せて作られた混合液について解説していきます。
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参考資料
輸液の仕組み 混合液

混合液とは
混合液とは名前の通り生理食塩水とブドウ糖液を混合した輸液です。
海外では混合液を使わない場合が多く、ブドウ糖液と生理食塩水の使い分けで行なっている事もあるそうです。
混合液の最大の特徴は細胞内液と細胞外液の分布が輸液によって調整できることです。
生理食塩水は細胞外液のため細胞外に分布されますが、ブドウ糖液は血管内では細胞内にも細胞外にも浸透圧に合わせて全体に分布します。
それらの特徴を混合させることで、細胞内と細胞外への分布を調整しています。混合液の種類は以下の4つになります。
- 1号液 開始輸液
- 2号液 脱水補給液
- 3号液 維持輸液
- 4号液 術後回復輸液
1号液が1番生理食塩水に近く4号液が1番5%ブドウ糖に近いです。そのため、混合液の中では1号液が細胞外(血管内)に1番多く分布し、4号液が細胞内に1番多く分布します。
その他、含まれる電解質の違いについてもこれから説明していきます。

1号液(開始輸液)
1号液は1/2生理食塩水とも呼ばれます。生理食塩水と5%ブドウ糖液が半分ずつ入っています。
生理食塩水より血管内に入る水分量は多くないため、水分過多を防ぎたい病態で使用されることが多いです。K等も入っていことから、臨床では腎機能が著しく悪い病態でよく使われます。
また、開始輸液とも呼ばれるように、病態が分からない場合の安全策的にも有用です。
2号液(脱水補給液)
2号液は1号液にKやP(リン)を負荷した輸液です。下痢による脱水時に使用されます。
また抗利尿ホルモン分泌亢進などで自由水排泄障害がある場合にも使用できます。
K補給の場合リンゲル液も存在するため、臨床ではあまり使われないことの方が多いです。
3号液(維持輸液)
3号液は1/3生理食塩水とも呼ばれます。約1/3の濃度の電解質組成です。ブドウ糖も含まれているため、少量のエネルギー補給にもなります。
2000ml(500ml×4本)で1日に必要な電解質濃度を補給できる為、維持輸液とも呼ばれています。
4号液(術後回復液)
4号液は1/5生理食塩水とも呼ばれます。ブドウ糖が大半を占めNa濃度も低いため、救急外来では使われることは滅多にないです。
術後回復液と呼ばれるように手術後は利尿期で血管内に水分が戻ってくることが多いため、4号液の投与で過度な心負荷を予防することができます。
また、Kも含まれていません。
臨床における輸液の使い分け
来院寺(初療時)
- 全く情報なし:1号液または生理食塩水
- 情報あり:酢酸リンゲル液
- 小児:生理食塩水or1号液
- 腎機能低下:1号液
- 脳血管疾患やCS1などの心不全:乳酸リンゲル液orブドウ糖液
- 低血糖:ブドウ糖負荷リンゲル液
- DKA(糖尿病性ケトアシドーシス):生理食塩水
入院後の一例
経口摂取できるが少量:
- 酢酸リンゲル液(500ml)×1
- 3号液(500ml)×2などを持続投与
経口摂取不可
- 高カロリー輸液を持続投与
終わりに
輸液の特徴を以下にまとめました。

- 全てのメイン輸液の基礎は生理食塩水と5%ブドウ糖液から成り立つ
- 生理食塩水に電解質を負荷したものがリンゲル液
- 生理食塩水とブドウ糖液を混合したものが混合液
メイン輸液はそれぞれ成分や特徴が異なります。無色透明で何気なく投与されることが多いメイン輸液ですが、使い方次第で治療にもなります。

輸液管理ができると栄養、水分出納、電解質などさまざまな病態に役立ちます。
