はじめに

Nurse
疾患に対する手術の手順をポイントを踏まえて紹介していきます
今回は手術の術式や大まかな方法のみでなく、手術の際に使われる器械や流れを解説していきます
手術室看護師や手術看護に携わる職種、手術を受けられる人などが少しでも手術に対してイメージがつき、少しでも安心して手術を実施できることを目的としています
- 手術は施設によって方法や手術時間が大きく異なりますので、目安として参考にしてください
 - 特に閉創や創部保護などは大きく異なることが多いです
 - 手術の方法などは医療の進歩に伴い変わっていくことが多いです。可能な範囲で訂正はしていきますが、変更できていない場合はご了承ください
 - 通常と異なる場合を除いて、消毒やドレーピング、準備過程における手技は割愛しています
 
この一冊で手術看護の基礎が分かる↓

Nurse
麻酔・手術看護の全体像・手術に必要な解剖学全て分かるオススメの一冊です!
皮膚科の基本
全層植皮と分層植皮
皮膚科で行われることの多い手術の一つに植皮手術がありますが、大きく分けて全層植皮と分層植皮に分かれます
植皮は体液の漏出を防ぎbiological dressing(生体被覆)より有効
全層植皮
全層植皮は上皮から真皮以下を含む植皮になるため、植皮の範囲は狭く深いことが多いです
一般的にはメッシュダーマタームなどでハニカム状にすることは少ないですが、切除の程度や移植範囲によっては行うこともあります
鼠径や鎖骨、耳前、足内果などが主な植皮部位で関節などにも可能であることが特徴です
分層植皮
分層植皮は皮膚の内、上皮のみを採皮し真皮を含まない移植方法です
薄く広範囲の切除が可能ですが、メッシュダーマトームなどでハニカム状の移植片にする必要があります
採皮にはエアーダーマトームを使用することがほとんどです
背中.臀部.腹部.大腿などが主な植皮部位で伸縮しにくいため肘などの関節には不適応です
全層植皮と分層植皮の比較
| 全層植皮 | 分層植皮 | |
| 採皮 | メス | ダーマトーム | 
| 生着 | しにくい | しやすい | 
| 片の収縮 | 一次収縮は強い 二次収縮は弱い  | 一次収縮は弱い 二次収縮は強い  | 
| 色素沈着 | 起こりにくい | 起こりやすい | 
| 美容 | 期待できる | 期待できない | 
| 感覚 | 出現遅い 完成早い  | 出現早い 完成遅い  | 
| 感染への抵抗 | 不可 | 比較的可 | 
| 骨・軟骨・腱上 | 生着しない | 生着しない | 
| 適応 | 小さい範囲 美容効果を期待する部位  | 広い四肢.新鮮創 出血する骨面..筋・骨膜  | 
| 不適応 | 広範囲.血流悪い母床上 | 体幹負荷部、摩擦部.凸凹.穿孔 | 
タイオーバー
植皮などの手術で主に行われる固定方法です
皮膚の上に抗菌剤配合の塗布材(ソフラチュールなど)を置き、濡れたガーゼ.綿などで厚みを作ります
タイオーバー用の糸タイオーバー周囲の皮膚にかけ、対角状に糸を縛ることでガーゼを圧迫固定していきます
一般的に3〜5日程度で抜糸してタイオーバーを解除します
タイオーバーのメリット
- 移植した皮膚を3〜7日程度、創面と密着することで皮膚の生着を促す
 - 創面からの毛細血管新生を促す
 - 滲出液の貯留を防ぐ
 
タイオーバーのデメリット
- 体動でずれたり外れやすい
 - 均一に固定されてないと一部壊死する可能性がある
 - 皮膚と縫い付けているため疼痛あり
 
全層植皮術/悪性腫瘍切除術
- 体の一部から採皮し腫瘍切除部位に移植する手術
 - 全層の場合は範囲が小さく、腰背部など目立たない部分からの採皮が多い
 

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全層植皮術の場合は腫瘍の切除と併せて行うことが多いです。台を2つに分けて、腫瘍切除した器械と植皮の器械が混ざらないようにすることがポイントです
全層植皮術の概要
| 疾患 | 皮膚悪性腫瘍 | 
| 体位 | 主要な場所によって異なる | 
| 手術時間 | 1時間程度 | 
| 出血量 | 50ml以下 | 
| 麻酔方法 | 全身麻酔 | 
全層植皮術の手順
開創〜悪性腫瘍切除
ここで使用するもの
- 皮膚ペン
 - 局所麻酔薬(部位によって異なる)
 - 有鉤鑷子(アドソンなど).メス(円刃)
 - モスキートペアン
 - 電気メス(必要時)
 - バイポーラ
 
- 皮膚ペンにて摘出部位をマーキング後、局所麻酔(リドカインなど)
 - 有鉤鑷子にて開創部を把持
 - メス(円刃)にて開創
 - 粘膜等把持する場合はモスキートペアンを使用し剥離後、腫瘍摘出する
 
- 創部が小さいことが多いため、基本的にはアドソンやモスキートペアンのように先が細いものを準備
 
- 出血箇所はバイポーラで止血後に創部を生理食塩水で洗浄
 
- 腫瘍の組織を摘出後は今まで使った物品などを不潔扱いとして新しい機械台で手術を再開する
 - 手袋も清潔なものへと交換、バイポーラや、吸引篩管も新しいものへ変える
 - 腫瘍摘出で使った器械のカウントやガーゼカウントも先に行う
 
腫瘍切除後〜採皮
ここで使用するもの
- 皮膚ペン.型番(必要時)
 - 局所麻酔薬(部位によって異なる)
 - 有鉤鑷子
 - メス(円刃)
 
- 皮膚ペンで採皮部位をマーキング(必要であれば布のような型番を腫瘍の大きさに切って、それに合わせて採皮部位にマーキングを行う)
 - 局所麻酔(リドカインなど)
 - 有鉤鑷子で把持して、メス(円刃)で皮膚切開
 - メスにて植皮となる部分を採皮
 
- 採皮する部分は腫瘍とは異なり病変がない部位のため、腫瘍組織で汚染しないよう器械を分けて使用する
 
- 採皮部位をメッツェンでトリミングし不要な脂肪組織などを切除する
 
採皮後〜植皮形成
- 植皮はダーマトームにてハニカム状に形成し形を整える
 - エチロンなどで皮膚と縫合
 - 必要であればタイオーバーにて固定する
 

 

