【外傷看護】JPTEC参考-外傷処置とSMR-

救急/急変/災害/
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はじめに

ER Nurse
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ここでは、外傷前救護(JPTEC)を参考に、外傷時における処置を中心として紹介していきます!

JPTECとは一般社団法人JPTEC協議会が主催する資格の一つで、外傷病院前救護ガイドライン(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)の略称になります。

一般社団法人 JPTEC協議会▼

JPTEC協議会
JPTECは日本救急医学会公認の病院前外傷教育プログラムであり、医師向けのJapan Advanced Trauma Evaluation and Care ( JATEC ) との整合性を保つことにより、病院前から病院内まで一貫した思想の...

JPTECの概要やフローチャートはこちら

JNTECについてはこちら

参考資料

JPTECガイドブック

JPTEC公式ガイドブックになります。受講に必須の参考書であり、病院前救護について充実した内容が記載されています。

外傷処置

止血法

  • 止血の方法は主に直接圧迫止血法,止血点止血法,止血帯法の3種類

直接圧迫止血法

  • 止血に対する第一選択
  1. 出血部位に清潔なガーゼを当てて、その上から直接圧迫止血を行う
  2. ガーゼが多量に血液汚染した場合は止血効果が弱まるため、新しいガーゼに交換する

止血点止血法

  • 出血している血管がはっきりと分かっている際に有用
  • ピンポイントで止血を行うため最も身体的負担は少ない
  1. 出血している血管の中枢部分を圧迫することで止血する

止血帯法

  • 止血帯(ターニケットなど)を用いて止血を行う
  • 直接圧迫止血などと併用して実施する
  1. 出血点より5〜8センチ中枢に止血帯を装着する
  2. 出血が見られなくなるまで止血帯を締める
  3. 医師の指示のもと2時間以内を目安に圧迫を解除する

各止血法のまとめ

止血法特徴
直接圧迫止血法・出血点をガーゼなどで直接抑えて止血する方法
・出血でガーゼが濡れると止血効果が弱まるため適宜交換する
止血点止血法・出血点より近位の動脈を止血する方法
止血帯法・出血点より近位部をタニケットなどで圧迫して血液を途絶する
・長時間の駆血は組織障害になるため注意が必要

腸管脱出

手順

  1. 生理食塩水で湿らせたガーゼなどで被覆
  2. 滅菌アルミホイルやラップ材で被覆

ポイント

  • 処置のタイミングは搬送中の救急車内で行うことを原則とする

フレイル(胸部半周)固定

  • フレイルチェストとは連続する複数の肋骨がそれぞれ2カ所以上分節骨折を起こし連続性を失った状態

手順

  1. フレイルセグメントを用手的に圧迫し、胸壁の動揺と疼痛の軽減に努める
  2. 厚手のガーゼかタオルを損傷部にあてる
  3. 上から幅の広いテープで胸壁の半周を圧迫固定する

ポイント

  • 胸壁が吸気時に陥没、呼気時に膨隆(奇異呼吸)する

穿通性損傷(刺創)

手順

  1. 刃渡りが出ている部分はガーゼを巻くなどして被覆する
  2. 丸めたガーゼやタオルなどで両側を挟み込みテープで止めて刃物を固定する

ポイント

  • タンポナーデ効果により止血に役立っていることもあるため刃物は原則抜かない
  • 刃物が動くことで内部で円錐状に臓器損傷をきたすこともあるため注意
  • 処置の際、自らを傷つけないように注意する

3辺テーピング

  • 開放性気胸に対する緊急蘇生処置

手順

  1. 実施前後の呼吸状態を観察する
  2. 清潔なフィルムを創部に当てる
  3. 血液が流れる方を開放して3辺をテープで止める
  4. 呼気の時のみ肺から空気が漏出することを確認する

ポイント

  • 血液で閉塞しないよう血液が流れる下方は開放する

SMR(脊椎運動制限)

  • SMRとはSpinal Motion Restrictionの略称であり脊椎運動制限を意味する
  • 脊椎や脊髄を損傷している場合、体動に伴い二次的損傷を引き起こすことで、損傷を悪化させる可能性がある
  • 脊椎や脊髄の損傷している可能性がある傷病者には、頚部の固定や全脊柱固定など脊椎運動制限を行う

SMRの方法

  1. 初期の頭部固定は声をかけながら反応を待たず用手的に行う(MILS)
  2. 振り返るなど首を動かす動作は避ける
  3. 初期評価・先進観察を行い必要であればネックカラー着用
  4. 全身観察終了後バッグボードへ移動
  5. スネーキングを予防するため体幹から固定(パッケージ)する
  • 頭部を用手固定からヘッドイモビライザーへ付け替える時は固定を解除する時間を最小限にする
  • バッグボードへの移動は背部観察時や腹臥位から仰臥位への体位変換の際に合わせて行っても良い
  • アンパッケージはスネーキングを防ぐために頭部から固定を外す
  • 小児は頭部が大きいので背中にタオルなどを入れて体位を整える
  • 妊婦は下大静脈圧迫を避けるために可能な範囲で10〜20度程度の左側臥位を保つ

SMRの適応

①脊椎・脊髄損傷の可能性がある受傷機転

  • 高速の自動車事故
  • 高所からの墜落事故
  • 飛び込みによる損傷
  • 脊椎周辺の穿通創
  • 頭頚部へのスポーツ外傷

②脊椎・脊髄損傷を疑うべき所見

  • 頚部や背部の疼痛・圧痛
  • 四肢麻痺・対麻痺などの神経学的所見
  • 頭部・顔面の高度な損傷
  • 意識消失の病歴

③正確な所見が得られない傷病者

  • 事故や受傷による精神的動揺
  • 意識障害
  • アルコールや薬物の摂取
  • 身体部位のいずれかに強い痛みを訴える

ロード&ゴーの適応でもSMR(全脊柱固定)を行わないこともあるので注意

MILS/用手正中固定

  • MILS:Manual In Line Stabilisationの略

手順

  1. 頭側で頭部を保持できる体位を取る(肘を地面について抑えれる姿勢)
  2. 頭部を両側手掌で抑える

ポイント

  • 耳は完全に塞がない

おわりに

外傷に対する応急処置は病院前救護の醍醐味です。緊急性を優先する現場だからこそ、早期の判断と対応が求められます。

処置は重要な項目ですが、処置の判断の遅れや処置自体に時間がかかることで全身に影響を及ぼすことがあります。

今回紹介した外傷処置は標準的対応です。救急車での対応では、一般的な処置以外はロード&ゴーとして搬送を優先します。

しかし、医師が災害現場に赴くDMATなどではインプロビゼーション(即興医学)などを行うことも考えられるため、現場の状況に合わせた臨機応変な対応が必要となります。

ER Nurse
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JPTECでは、これらの処置を含めて外傷病院前救護を学ぶことができます。

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