【救急看護】JRC蘇生ガイドライン2025年パブリック版-変更・更新-

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はじめに

ER Nurse
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JRC蘇生ガイドラインが5年ぶりに更新されます!本記事は変更・更新の予定として議題に上がっている部分をpublic版からピックアップして紹介します。

2025年10月22日にAHAが蘇生におけるCPRとECCガイドラインを更新しました。それと同時期、2025年10月23日に日本蘇生協議会(JRC)も蘇生ガイドラインの更新を行いパブリック版が公開されています。

パブリック版とは一般公開(パブリック)用であり、これから2020年11月30日まで意見を収集します。それらを元に最終的な書籍の販売は2026年3月を予定しています。

ガイドラインの更新は5年ごとにされているため、前回の2020年からアップデートされたものが今回のガイドラインになります。確定事項ではないですが、変更を検討している内容を含めてパブリック版を紹介していきます。

AHA 蘇生ガイドラインの変更点はこちら↓

参考資料

日本救急医学会ICLSコースガイドブック

JRC2020年ガイドラインまでの書籍になります。2025年は3月ごろ書籍化予定になるかと思います。もうしばらくお待ちください。

JRC蘇生ガイドライン2025パブリック版とは

ガイドライン

JRC蘇生ガイドライン2025パブリック版 項目

JRC蘇生ガイドライン2025

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コメントの締切りは2025年11月30日(日)までになっています。

JRC蘇生ガイドライン2025パブリック版の意味合い

JRC (日本蘇生協議会)はガイドラインを最終確定する前に、一般公開をして意見を募集してそれらを含めて完成版を発刊します。2020年においてもCPVID-19の影響で遅れましたが、2020年3月にパブリック版を公開し、2020年6月に発刊しています。

パブリック版では、医療者、教育担当者(インストラクターなど)、救急現場の関係者だけでなく非医療従事者からも意見を募っています。蘇生ガイドラインの中には、院外などで倒れている人を発見した際の救助方法なども含まれているため、全ての人から意見を集うのは妥当と言えます。

また、臨床や教育などが大きく変わるため、事前に変更し得る内容を公開することや臨床に則しているか、意見を募集できることも大きなメリットです。

JRC蘇生ガイドライン2025パブリック版の注意点

パブリック版はJRCが意見を集うために公開しているもので完成版ではありません。変更し得る内容を、臨床で行なったり救命講習のインストラクションに取り入れることはタブーとなっているため、完成版の公開を待つ必要があります。

AHA蘇生ガイドライン2025年 課題や提案内容

パブリック版では変更を検討している内容などが提示されています。それらの中でもBLSとALSに関する課題や推奨されている提案などを項目ごとにまとめました。

下記内容以外にも変更点や推奨されている提案などは多数あります。public版のPDFからご確認下さい。

一次救命処置(BLS)

応援要請とCPR

  • 119番通報前のCPRではバイスタンダーが一人だけの場合は1分間のCPRを行ったのちに119番通報する(CPRファースト)であるが、携帯電話を持っている場合は119番通報を行い、ハンズフリーフォンで通話しながらCPRを開始する。

胸骨圧迫

  • 心停止の成人に対しては、人工呼吸からではなく胸骨圧迫からCPRを開始する。
  • 可能ならば硬い表面でCPRを行うことを提案する。
  • 背板を使用する効果のエビデンスの確実性が非常に低いので、現在背板を日常的に使用している場合はその使用を継続し、逆に未導入の場合は新たに導入する必要はない。
  • 循環を回復させるための咳CPRは心停止に対してルーチンに行わず、意識消失前に無灌流のとなるような心リズムにのみ一時的に考慮する。
  • 前胸部叩打は心停止に対して行わないことを推奨する。
  • 拳ペーシングは行わないことを推奨する。意識消失前に徐脈から心静止になりような心リズムでのみ、一時的手段として提案する。

除細動

  • 「手動式除細動では、電気ショック前の胸骨圧迫中断時間をできるだけ短くし、10秒以下にする」という文言の10秒以下を削除し、できるだけ短くすることに努める。
  • 溺水による成人および小児の心停止に対して、まずCPRを開始しAEDが使用できるようになるまで継続する。

人工呼吸

  • 人工呼吸のトレーニングを受けており、それを行う技術と意思のある救助者は、すべての心停止傷病者に対して胸骨圧迫と人工呼吸を実施することを提案する。

成人の二次救命処置(ALS)

ALS全体のアプローチ

  • 3回以上の電気ショック後もVF/p VTが持続する心停止の成人に対しては、二重連続電気ショック(DSED)またはベクトル変更(VC)による電気ショックを考慮する。
  • 気管挿管後の位置確認に、ETCO₂(終末呼気二酸化炭素濃度)波形の確認を明記。
  • 自動胸骨圧迫装置(mechanical CPR device)はルーチンで使用しないことを提案する。
  • 質の高い用手胸骨圧迫を持続的に行うことが困難である、または救助者の安全性が損なわれる状況では、自動胸骨圧迫装置を代替手段とすることは理にかなっている。

薬剤投与

  • 成人の心停止における初回の薬物の投与経路として静脈路を第一選択とすることを提案する。
  • CPR中にはアドレナリンの代わりにバソプレシンを投与しないことを提案する。
  • CPR中にはアドレナリンにバソプレシンを追加しないことを提案する。
  • 炭酸水素ナトリウムなどの緩衝液は高カリウム血症やナトリウム遮断薬、三環系抗うつ薬中毒の治療など特別な状況を除き、心停止患者に投与しない。
  • CPR中に意識回復する事例(CPR-induced consciousness)に対して、ごく少量の鎮静・鎮痛薬を用いることは理に適っている。ただし、筋弛緩薬のみを投与しない。
  • 成人のIHCAとOHCAに対して、バソプレシンと副腎皮質ステロイド薬の併用をしないことを提案する。
  • 成人のIHCAとOHCAに対して、カルシウムをルーチンに投与しないことを推奨・提案する。

特定手技について

  • REBOA (大動脈遮断用バルーンカテーテル)使用は、RCTでの評価目的に限定される。
  • 従来のCPRでROSCしない一定の基準を満たした成人に対しては、ECPR (体外式循環補助下CPR )の導入を考慮する。
  • 心停止の可逆的原因を診断するために、CPR中にPOCUS (ポイント・オブ・ケア超音波検査)をルーチンには行わないが、経験豊富なスタッフがCPRを中断することなくPOCUSを実施できる場合は、診断方法の追加としてPOCUS実施を検討する。

特殊な薬剤について

  • 心停止ではない患者における急性高カリウム血症の治療には、グルコースと併用した静脈内インスリン、および/またはβ 2刺激薬吸入または静脈内投与を提案する
  • 心停止ではない患者における急性高カリウム血症の治療において,静脈内炭酸水素ナトリウムのルーチンには使用しないことを提案する
  • 心停止患者における急性高カリウム血症によると考えられる心停止の治療には、グルコースと併用した静脈内インスリンを提案する。

おわりに

ガイドライン変更は救命講習の受講及びインストラクターの改定、臨床における対応にアップデートが必要です。変更後から基本的に5年間は更新されないため、変更点を理解し活用していくことが重要です。

本記事ではパブリック版における変更点のため、変更したときのことを想定してインストラクションや臨床での医療を試みることで変更後、スムーズに対応することが可能です。

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研修などの受講していないと、看護師経験が長くても最新の蘇生知識がアップデートされていないことも多くあります。ぜひ部署内で共有し、当たり前のように行なっている対応がガイドラインに則しているのか、参考にしてみて下さい。

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