【救急看護】DC(直流除細動器)の機能と設定

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除細動器のモードや誘導確認していますか?

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ここでは、除細動の操作方法や心停止の際に除細動を実施するにあたって必要な機能などを紹介していきます!誤った使用を防ぐためにも大切な知識になります。

※本記事では直流除細動を略称(DC)で以下記載しています。

DC(直流除細動器)とは

DC(Direct Current)とは名前の通り直接的に除細動を実施するための機械です。DCAED(自動体外式除細動器)を含む除細動器で電流を流して心臓に刺激を与えることを除細動と言います。

除細動には単相性二相性があり、現在の除細動は二相性が大多数を占めています。単相性のDCではパドルの一方からもう一方に向かって電気刺激が流れるのに対して、二相性のDCではパドルの一方から電気刺激が流れた後、戻るようにもう一方からも電気刺激が流れます。

一方向から電気刺激が流れる単相性に大して双方向から電気刺激が流れる二相性のDCの方が少ないエネルギー量で除細動を実施できるのが特徴です。実際に単相性の除細動では360Jのエネルギー量が推奨されていますが、二相性の場合には120〜200J(メーカー推奨値)のエネルギー量で同等の効果が得られます。

DCには除細動を適切かつ早期に行うために多数の機能が搭載されています。本記事では、心停止において除細動を実施する際の操作方法や確認項目などを紐解いていきます。

▼心停止以外の不整脈に対する除細動に関してはこちら▼

参考資料

ICLSコースガイドブック

ICLSコースガイドブックでは除細動の使い方のみでなく、救急全般の基礎知識を学ぶのにオススメのガイドブックです。

DC(直流除細動器)の機能

DCはメーカーによって種々ありますが、基本的な機能は同じです。DCには以下のようなつまみやボタンがついています。

  • 出力エネルギー調節つまみ
  • モード選択つまみ
  • 誘導の切り替えボタン
  • 心電図のマーク,プリント,サマリー各ボタン
  • 音量調整ボタン
  • 心電図の感度切り替えボタン
  • ペーシング各ボタン
  • 同期モードボタン
  • エネルギー充電ボタン
  • ショックボタンボタン

これらのボタンなどを操作してDCの設定を行います。重要な機能についてまとめました。

出力エネルギー調整/モード調整

DCについているつまみを調整して出力調整を行います。心停止における初回の除細動として単相性のDCであれば360Jで設定し、二相性であれば推奨エネルギー量(120〜200J程度)に設定します。推奨エネルギー量(J)は各メーカーで分かるように色などを変えてあります。

つまみの中には出力と同時にAEDモードもあります。必要の応じてAEDモードの使用も可能なため、万が一医師または看護師の到着が遅くなった場合にもAEDモードにすれば使用は可能です。

心電図の誘導や感度の切り替え

DCはAED(自動体外式除細動器)と違い波形の判読が必要となります。DCにも心電図用のコードが備え付けてあるため、電極をつけることでモニター上に波形が描出されます。

波形はⅠ誘導、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導に分けられ、感度も変更可能です。誘導や感度によっては心室性不整脈を見逃したり、逆に誤った判読をしてしますことに繋がるため適切な設定が大切です。Ⅱ誘導で感度1倍が基本となります。

また、誘導の切り替えではパドル(パッド誘導)も選択可能です。パドル(パッド)誘導を選択する場合にはパドル(パッド)が電極代わりになり波形が判読されます。簡易的で利便性が高い一方、密着性が低い場合には波形の描出が不安定になる可能性があります。

また、除細動を実施するにあたって、パドル(パッド)の当てる位置は所定の位置が決まっています。その角度で心電図の描出が困難であってもパドルの当てる位置を変更することはできないため、可能であれば電極をつけ確実なモニタリングをオススメします。

エネルギーの充電とショック

エネルギーの充電ボタン、ショックボタンでショックをかけることができます。パッド誘導の場合には本体で操作するため、充電ボタンを押したのち、エネルギー量が所定に至っていることを確認し、ショックボタンを押す必要があります。

パドルでショックをかける場合には、パドルの持ち手サイドに充電ボタンパドルの持ち手上部にショックボタンがついているため、パドルを体に当てたのちショック実施者が手元で充電、ショックを行うことで安全にショックを行うことができます。

ER-Nurse
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充電は片側のパドルについている充電ボタンで可能ですが、ショックボタンは両方のパドルについているショックボタンを同時に押す必要があるため注意が必要です。

同期/非同期

心停止以外で必要になる項目です。心停止においては特に操作不要なボタンですが、心停止以外の頻脈性不整脈で除細動をかける場合には同期ショックを選択します。

電気ショックは不整な脈拍を正常に戻す効果もありますが、場合によっては心臓に余計な電気刺激を送ることで不整脈を新たに誘発するリスクも考えられます。

特に心臓の不応期であるT波に期外収縮がかかるRonTなどの場合には、心室頻拍に移行しやすいのと同様に、T波のタイミングでショックを実施しないようにR波に同期させることで適切な除細動の実施を行うことができます。

経皮ペーシング

徐脈の際に電気刺激を定期的に流すことで洞房結節の役割を補助し、一時的なペースメーカの役割を果たします。

経皮からの電気刺激のため、一時的ペースメーカー(テンポラリーカテーテル)などと比較すると確実性は低く、また、同じ場所に貼付して長時間行うと皮膚損傷のリスクもあるため注意が必要です。

心停止における除細動

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心停止における除細動の実施についての注意点を説明していきます。除細動を適切に使うためには、DCの理解と設定などの確認も重要になります。

貼付場所と確認事項

貼付場所は右の鎖骨下左腋下約5〜8cmになります。下着などは外す必要はなくずらして貼付して良いとされています。

貼付前の確認事項

  • 金属
  • 水濡れ
  • 体毛
  • 貼付薬(伝導の低下)
  • ペースメーカー

金属は全身ではなくパドルやパッドの周囲と胸部になければ問題ありません。首のみの細いネックレスなどは特に影響はなく、万が一、金属の可能性がある大きなネックレスなどをつけていた場合には頭部側にずらせば実施可能です。

ペースメーカーがある場合には3cm以上離した場所にパドルやパッドを当てて実施します。除細動を行うにあたって重要な点は心臓を挟むことなので、原則的なパドルの当てる場所に決まりはありますが心臓を挟んでショックをかけることができれば多少ずれても同等の効果を得ることができます。

パドルに塗布するゼリー

現在はパッドでの除細動が主流となっていますが、パドルでの除細動を実施する場合にはパドルの接着面にゼリーを塗布する必要があります。理由としては、平面なパドルにゼリーを塗布することで、より皮膚に密着してショックを行うことができるためです。

パドルと皮膚の間の隙間をゼリーが介することで、ショックを確実に体表に流す効果を得られるため重要な役割を担っています。

エコー検査などで使うゼリーは水などでも代用可能ですが、除細動を実施するためのゼリーは他のもので代用すると電動効率が変わり適切なエネルギー量でのショックに繋がらない可能性もあるため、専用のゼリーを使用する必要があります。

ショック前の安全確認

ショック前には安全確認が必要になります。従来から『私離れています、周り離れています、酸素離れています』といった合言葉があるように、人と酸素を離す必要があります。

近年では、パッド誘導であればショック直前まで胸骨圧迫実施者は離れない、プラスチック手袋をしている場合には胸骨圧迫実施者は手を離すのを最小限にし、ショック実施後即座に胸骨圧迫を再開するなど胸骨圧迫中断時間をより短縮するための行動がとられています。

エネルギー量

エネルギー量(J)は単相性の場合は360J、二相性の場合はメーカーの推奨量(120〜200J)程度で初回の除細動を実施します。二回目以降の除細動ではエネルギー量の増加を検討することはAHAガイドラインでも推奨されていますが、エビデンスなどははっきりしていないため必須事項ではありません。

小児の場合は4J/kg程度のエネルギー量で小児用のパドルまたはパッドを使用することが推奨されています。パッドは小児用が別に準備されていることが多く、パドルはトリガーなどを引いてスライドすると外側が外れて小児用になることが多いです。

開胸術などで直接除細動を実施する場合には内用(直接心臓に当てる)のパドルがあるため、内用パドルを用いて10J程度のエネルギー量で実施します。

除細動における補足知識

除細動をより安全かつ確実に実施するために覚えてほしい知識です。空中放電やフラットラインプロトコールなどは、各救急の研修コースでも紹介されることが多いため研修前の事前学習としてもご参照ください。

空中放電

パドル式の除細動を実施する際に起こりうるリスクが高いものとして空中放電があります。除細動の適応と判断してDCを準備した後、充電して最終波形で除細動の非適応波形に変わった場合には除細動は中止になります。その場合には即座にパドルを戻す必要がありますが、誤って空中で除細動を実施してしまった場合、空中に放電され感電のリスクが生じます。

基本的には空中放電を防ぐために即座にパドルを戻すか、内部放電のボタンがある場合にはそのボタンで放電することで安全を確保できます。また、パッドであれば空中放電のリスクは低くなるためパドルでなく、パッドを使用することも安全面では大切になってきます。

フラットラインプロトコール

除細動を実施するにあたって波形の判読が必須ですが、除細動の適応となる波形として無脈性心室頻拍(pulseless VT)心室細動(VF)があります。心静止(Asystol)では除細動の適応にはなりませんが、心静止に見えても実は電極が外れていることやⅠ誘導で波形がうまく描出できていない可能性もあります。

そのため、心静止(Asystol)と呼ばれるフラットな波形(フラットライン)の場合には、DC側の設定などに不備がないかを確認することが大切です。フラットな波形であった場合に確認するポイントは主に3つです。

フラットラインで確認する3つの“ど”

  • リー
  • 誘導(ゆうう)
  • 感度(かん)

適切な判読を行うためにも除細動の導入時とフラットな波形(フラットライン)では3つの”ど”が適切に行えているかを確認することが大切です。

二重ベクトル除細動(DSED)

二重ベクトル除細動とはDCを二つ用いて行う除細動になります。2つのDCを用いて除細動を行うことで多方向からの電気刺激を与えることができるため、蘇生を図る行為になります。

そういった提案は以前からありましたが、AHA2025年のガイドラインでも二重ベクトル除細動は推奨されていないため、DSEDを行うのではなく必要であればエネルギー量を増加するなどの対応が望ましいです。

まとめ

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DCはAED(自動体外式除細動器)と異なりマニュアル操作が多いです。そのため、様々な機能でより適切な除細動を実施できますが、正しい使い方と安全管理が必要になります。

除細動は心停止における重要なキーアイテムです。早期のショックが重要となるため、準備や設定の手順を理解しスムーズに実施できるようにすることで蘇生に繋がります。

また、心停止=除細動のイメージが強いですが、院内の心停止の大多数は除細動の非適応であることが多いです。除細動のみの対応ではなく、原因検索や薬剤投与、気道の確保など除細動の非適応波形であっても対応が行えるようにするとより急変時の対応に自信を持って行うことができます。

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