【小児外傷看護】子どもの怪我 看護と応急処置

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前回はこちら↓

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前回は受診についてお話ししましたが、今度は外傷看護と自宅での対策についてお話しします

本記事は小児のみではなく成人にも行える看護です

外傷の基本的な対応を心得ておけば、プライベートで交通事故などが発生した際にも落ち着いて対応できます

外傷治療の基本

外傷診療に対する基本的診療です

子供も織り交ぜますが基本的には全年齢に適応する対応です

外傷診療のポイントをまとめたものとして『MIST』『FIXES』『RISE』があるので紹介します

知ってるだけで、落ち着いて見逃さない看護が可能です

MIST

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外傷患者の受け入れの際に念頭におくべき事柄を頭文字をとってMISTと言います

  • M:受傷までの経過
  • I :外傷部位
  • S:VSや症状
  • T:必要な処置・治療

基本的な事柄ですが、VSの見逃しや外傷部位の見逃しを予防できます

VSはABCDEの順に観察し特に切迫するDには注意して観察します
(頭蓋内疾患による意識障害)

FIXES

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外来で初療後に行う治療についてです

見逃しやすい検査や治療を適切に行えているか確認するのに用います

F:腹腔内出血や尿細管損傷などの確認

直腸診(ジギタール)やカテーテルの挿入を行い、出血の有無を確認します

I:外傷に伴う感染予防

破傷風トキソイドの筋注などは交通外傷など屋外での外傷により、感染リスクが高い場合には必須です

小児の頃に投与している破傷風のワクチンは成人になると効果が薄れます

X:放射線検査

外傷診療における診断の最も有用な検査のため、レントゲン及びCTにて評価します

頸椎損傷などはMRIで評価する場合もあります

E:12誘導心電図よる心損傷の評価

エコーでも確認しますが心タンポナーゼによる低電位の有無などを評価します

また、12誘導心電図では胸部誘導の低電位による気胸の有無も評価できるので重要な検査となります

S:シーネ固定

前述した通り骨折した部位より2関節を固定します

鎖骨骨折であればクラビクルバンド、肋骨骨折であればバストバンドなどで固定も行います

RIZE

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スポーツ外傷を含む四肢損傷時の対応です

R:安静による骨折部位の悪化防止

安静は大切です

痛みが伴う場合には無理に動かすのは避けたほうが良いです

I:冷却による腫脹の軽減と疼痛緩和

冷却は深部の冷却が有効なため、基本的にはアイスノン(氷枕)等を用いて行います

(湿布等は傷口には皮膚障害も起こるため推奨しません)

知覚麻痺にならない程度で冷却を行います

S:圧迫による出血防止

止血の方法としては直接圧迫止血法と関節圧迫止血法があります

T:腫脹軽減と早期消退を目的とする挙上

外傷が起こるとサイトカイン等の働きで血管透過性亢進が起こり細胞外に血液が集まります(腫脹)

内出血や腫脹は筋肉の多い部位では吸収されやすく、手足の末梢に広がると吸収は遅延します

心臓より高い位置に挙上することで腫脹の軽減と、早期消退を図ることができます。

外傷看護

外傷看護でPointとなることは『目先の傷より中身の傷』です

10センチ程の挫創で滲出性の出血などがあるとそこに視点が当てられますが、それに伴う頭蓋内出血や、腹腔内出血、骨盤骨折などの方が圧倒的に重症です

MISTやFIXES、RIZEを上手く活用し、見逃さない看護を行うことが大切です

家でできる外傷予防

ママナース
ママナース

家でできることは主に2つ

  • 予防すること
  • 応急処置をすること

家で行う外傷予防

家でできる事で最重要となるのが予防です

転倒・転落はもちろんのこと、怪我のリスクはあらゆる所に転がっています

そのリスクを考え予防することが大切です

気をつけること5箇条

  • 手の届くところに怪我につながるものを置かない
  • 角など鋭利な所を保護する
  • 階段など落ちそうな場所には行かない
  • 指など挟みそうなところは防止する
  • 常に繰り返し危ない行動に対して声かけをする

上記内容は病院でもご家族に説明している内容であり、家でも徹底することが大切です

家で行う応急処置

応急処置の基本は以下の4つです

  • 止血
  • 冷却
  • 洗浄
  • 固定

止血

出血に対しては止血を行います

直接圧迫止血

  • 出血部位に綺麗なガーゼ等を当て上から押さえます
  • 直接抑えることで出血部位を確実に圧迫止血が可能です

関節圧迫止血

  • 出血部位より近位(心臓に近い側)を圧迫し、出血部位へ行く血流を減らすことで止血が可能です

冷却

腫脹・熱感・疼痛がある場合には冷却を行います

  • 熱感は傷の部位に炎症性サイトカインなどの物質が集まることで出現します
  • 炎症性サイトカインにより血管透過性が亢進
    血流促進され白血球など傷を治す物質を多く集めます
  • 炎症性サイトカインに伴い疼痛物質(ブラジキニンなど)が集まり痛みを訴えます
  • 冷却は炎症を和らげ知覚を鈍麻させることで熱感や疼痛に対して効果があります

洗浄

創傷部位は傷口を洗浄します

  • 傷口は必ず洗いましょう
    特に砂や汚れがついている場合は流水でしっかり洗ってください
  • 消毒薬は常在菌など良い菌に対しても殺菌作用がある為、推奨されない場合もあります

固定

骨が折れている可能性がある場合には固定を必要とします

  • 病院では骨折に対しては固定を行います
    主に骨折に関して近位と遠位の2関節を固定します
  • 家での応急処置の場合は可能であれば真っ直ぐな棒などで骨折部位と一緒に巻き付けましょう
  • 固定が困難な場合は可能な限り動かさないように子どもに伝えてタオルなどで垂れ下がらないように保持してください

まとめ

子どもが怪我をした場合

  • 状況把握
  • 受診の有無を検討
  • 救急車or自家用車

疼痛評価のオススメ

  • 『NRS』
  • 『フェイススケール』

受診のタイミング

  • 『平日の昼間』
  • 受診の時は『電話』
  • 『頭部外傷』は要Check

子どもの外傷は昔も今も変わらず多くあります

しかし、感染症のリスクなどが懸念され、時代の変化とともに病院への受診の割合は圧倒的に増加しています

インターネットで情報が収集できる現代の情報社会では、そう言った感染のリスクや外傷に伴う合併症など不安を助長させる情報が数多くあり、両親が我が子を受診させたくなる気持ちは起こり得るべくして起こっていると思います

しかし、医療の進歩に伴い、治療の多様化、併せて医療ニーズも増加し、救急搬送の数や病院の受診率も旧来に比べ圧倒的に増加傾向にあります

コロナによる病院崩壊、感染リスクや救急車の不足などが騒がれている中、病院の利用や救急車の利用は本当に適正なのでしょうか

救急車は命を救うための車です

救急車を多用する人が増えることで、本当に使いたい人が落とす命はゼロではないと思います

必要な時に救急車を使う為には知識が必要です

子どもの外傷は時には怖いこともありますが、同様に判断が適正であれば家でできることも数多くあります。

情報社会の中、今までの情報に『リアル』な情報を付け加え、知識を元に『判断』できる

それにより、子どもを看れる社会が築き上げていければ、適切に必要な人が病院を利用できる社会が実現できると思います

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