本日のテーマは救急外来でも受け入れることの多い眩暈(めまい)についてです。
自覚症状が主の為、重症度の判別が難しいですが、体動困難で救急車で搬送されることも少なくありません。
しかし、めまいに対して救急外来で行える治療は対症療法(症状に対する治療)が一般的です。
また、めまいは疾患(病気の名前)ではなく症状の総称のため、原因となる疾患は様々であり、また、めまい自体にも種類があります。
今回はめまいの種類と対応方法について紐解いていきます。
参考資料
レジデントノート 2020年4月号
研修医向けの雑誌として販売されており、2020年4月号では救急をテーマに特集していました。
その中にめまいの項目があり、めまいに対する分類などが記載されていたので参考にしています。
その他参考書
- メディックメディア レビューブック
- 医学書院 耳鼻咽喉
めまいとは
めまいについて調べると色々な事が書かれていますが、日本神経治療学会では以下のように定義しています。
「めまい」は回転性眩暈(vertigo)に伴う異常感覚のことで,患者は静かに座っているにもかかわらず周囲が回って見える,あるいは右から左に動いて見えると体験を語るように錯視体験の一つ
日本神経治療学会
簡潔にまとめると、めまいとは異常感覚を伴う錯視体験と言うことになります
めまいの症状
めまいの種類は大きく分けて2つあります。
めまいとは自覚症状のため主訴から判断することになりますが、めまいの種類によって大まかな原因を分ける事ができます。
めまいの随伴症状
めまいに伴い、出現する症状は多くあります。
- 嘔気・嘔吐
- 眼振(黒目が揺れる)
- 眼前暗黒感(目の前が真っ暗になる)
- 不安定感(足元がふらつく)
- 一時的に目がチカチカ(一過性動揺視)
- 頭痛
- 耳鳴
- 聴覚障害(難聴)
- 食欲不振
一般的に起こりうる症状は上記の通りですが、その他にも原因疾患や個々によって症状は多岐にわたります。
主なめまいの原因疾患
耳鼻疾患
- メニエール病
- 良性発作性頭位眩暈症(BPPV)
- 突発性難聴
- 前庭神経炎
- 内耳炎
脳疾患
- 椎骨脳底動脈循環不全症
- 脳腫瘍(聴神経髄種)
- 脳血管障害
- Chiari(キアリ)奇形
- TIA(一過性脳虚血発作)
- 偏頭痛
その他(全身性)
- 脱水
- 自律神経障害
- 神経変性疾患
- 起立性低血圧
- 低酸素血症
- 貧血
- 低血糖
- 低血圧(心疾患)
- 電解質異常
- 心因性(精神疾患)
- 薬の副作用
この様に眩暈の原因疾患は数多くあります。これらの原因疾患をめまいの特徴や症状で分類し大まかな原因疾患を推定します。
前庭性めまいと非前庭性めまい
前庭性めまいとは脳や耳の障害により、前庭及び前庭神経が機能不全を起こし生じるめまいです。
前庭性めまいは更に障害部位によって、末梢性と中枢性に分類することができます。
中枢性めまい
- 脳幹や小脳の障害によって生じる
- 浮動性めまいの場合が多い
- 小脳梗塞や小脳出血では回転性の目眩が生じることもある
- 生命予後に関わる可能性が末梢性めまいと比べて高い
末梢性めまい
- 主に内耳や前庭神経の障害によって起こる
- 回転性めまいの場合が多い
- 頻度が多い
非前庭性めまい
- 内科や眼科的領域によるめまい
- 循環器疾患や精神疾患によることが多い
- 前庭性めまいに比べ、冷汗や嘔吐その他多彩な症状をきたしやすい
- 目の前が真っ暗になる(眼前暗黒感)症状を呈する事が多い
めまいの新分類
従来は前庭性(中枢性or末梢性)、非前庭性で分類し、原因を特定する方法が一般的でした
しかし、新しい分類として主要な疾患を主症状.抹消症状.中枢性症状から分けたものが以下の分類になります
①急性重度めまい
主症状
- 突然発症
- 症状が持続
- 重度で病的な見た目
- 嘔気、嘔吐、ふらつき
抹消症状
- 単方向性自発眼振
- HINT陽性
中枢性症状
- 垂直性・両方向性眼振
- 重度の平衡障害
原因
- 脳梗塞
- 前庭神経炎
②反復性頭位めまい
主症状
- 頭位変換で励起されるめまい症状
抹消症状
- 1分以内で消失
- 安静時は無症状
- Dix-Hallpike法で上向き回転性のめまいが誘発
- Epley(エプリー)法で症状改善
中枢性症状
- 短時間も長時間もあり得る
- 安静時にも軽度のめまいが持続
- Dix-Hallpike法で下向きめまい/純回転性めまいが誘発
- Epley法で効果なし
原因
- 良性発作性頭位眩暈症(BPPV)
- chiari(キアリ)奇形
- 小脳腫瘍
- 神経変性疾患
③反復性特発性めまい
主症状
- 特発性の発症起点
抹消症状
- 20ー1時間持続
- 一過性の聴力障害・自閉感
中枢性症状
- 数分で消失
- 新規発症で増悪傾向
原因
- メニエール病
- 一過性脳虚血発作(TIA)
めまい新分類による治療方針
めまいの新分類では主に症状の違いから急性重度めまい.反復性頭位めまい.反復性特発性めまいの3つに分類されます
主症状や抹消症状、中枢性症状から当てはまる症状を探し、大まかなめまいの種類を把握します
その後は下記の流れに沿って治療方針を検討していくと、大まかな治療方針が定まります
治療方針を見てもわかる様に、めまいに対する治療は非常に少ないです
また、らしいという表現の使い方を行う様にめまいに対する原因疾患を特定するには、造影剤という薬剤を使用したMRI検査や眼振の変化を見る検査を行う必要があります
そのため、めまいに対して特徴症状から大まかな治療方針を立てた上で、精密な検査及び治療を進めていく形になります
作用ごとの目眩を呈する薬剤
全身疾患や中枢疾患(脳の疾患など)の他にもめまいは薬の副作用で起こることもあります
血圧や神経に作用する薬は特にめまいを発現させやすいです
主なめまい(ふらつきを含む)を呈する薬剤には以下のものがあります
心作用
低血圧.起立性低血圧.催不整脈作用
- アルコール
- 抗不整脈薬
- 認知症治療薬
- 抗てんかん薬
- 鎮静性抗ヒスタミン薬
- 降圧薬
- 抗微生物薬
- 抗パーキンソン薬
- ADHD(注意欠陥多動性障害)薬
- ジギタリス配糖体
- ジピリダモール
- 睡眠薬
- 硝酸薬
- PDE5阻害薬
- 筋弛緩薬
- SGLT-2受容体阻害薬
- 尿路系抗コリン薬
中枢性抗コリン作用
- 筋弛緩薬
- 抗けいれん薬
脳毒性
- 抗てんかん薬
- ベンゾジアゼピン薬
- リチウム製剤
低血糖
- 糖尿病治療薬
- アドレナリンβ受容体拮抗薬
耳毒性
- アミノグリコシド
- 抗リウマチ薬
出血傾向.骨髄抑制
- 抗凝固薬
- 抗甲状腺薬
まとめ
今回の記事では眩暈(めまい)と大まかな症状及び治療方針について記載しました
記載した通り眩暈は様々な原因疾患が潜んでいるので、その鑑別が重要となります
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