超緊急の動脈損傷に対する応急処置
カテーテルで行う大動脈遮断を海外ではresuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA)、日本ではintra-aortic balloon occlusion(IABO)と呼びます。以前は大動脈遮断の一択でしたが、より短時間で行える応急処置として現在は国内においても普及しつつあります。

本日は外傷における高度な応急処置。IABOとその看護について紐解いていきます。
参考資料
救命救急 ビジュアルナーシング
救命救急ビジュアルナーシングとは救急外来に配属された看護師のための参考資料になります。イラストなどを豊富に使いわかりやすくまとめています。処置によっては救命医などに向けた専門書に比べて浅い部分もありますが、見応え間違いなしの一冊です。

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IABO(REBOA)とは
IABO(REBOA)とは大動脈ブロックバルーンの略称で大動脈を遮断するためのカテーテル治療になります。以前は根本的な止血を要する腹部以下の外傷において左開胸による大動脈遮断を行うことで出血をコントロールしていました。
しかし、左開胸は侵襲が大きくかつ実施するまでに準備と時間を要するため、より侵襲が少ない経皮的な大動脈遮断バルーン(intra-aortic balloon occlusion:IABO)を実施する施設が増加しています。海外でresuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta(REBOA)と表記することが多いですが、どちらも治療方法としては同義です。
IABOカテーテルは、先端にバルーンがついたカテーテルになっており大動脈を遮断できる程度の径を有しています。胸部大動脈以下でバルーンを拡張させることでバルーン以下の出血をコントロールするためのものであり、根本的止血を行うまでに出血を抑えることで凝固異常の抑制と、バルーンより頭側の血圧を維持することで、脳血流、冠動脈血流を確保する意味を持ちます。
IABO(REBOA)の適応
IABO(REBOA)の適応はバルーン位置より下位(尾側)の出血です。バルーンは鎖骨下動脈分岐部より下位にのみ留置可能なため、それより中枢の出血は適応外になります。出血源に関しては内因性でも対応可能です。
全身状態としては収縮期血圧が90mmHg未満かつ輸液などでの反応が乏しい状態が適応となります。
上記のような出血に対して出血コントロールが必要な場合に適応になります。あくまでも根本的止血の補助的役割であるため、止血後は根本的止血の早期対応が必要となります。
また、IABO(REBOA)挿入が困難な場合にはすみやかに左開胸して大動脈遮断が必要となるためIABOの実施と並行して大動脈遮断の準備なども進めていく必要があります。IABO(REBOA)挿入する可能性が考えられる症例では事前に血管の確保として4Frなど径が細いシースのみ挿入しておき、必要に応じて入れ替えるなどの手技を行うこともあります。
IABOの留置部位
バルーンを留置する場所は鎖骨下動脈分岐部〜総腸骨動脈分岐部までとなります。出血部位より頭側に留置するのが原則であり、Zone分類で表すことが一般的です。
大動脈のZone分類

IABO(REBOA)の禁忌
IABO(REBOA)は急性大動脈解離がある場合、バルーンの拡張で損傷をきたすため禁忌となります。大動脈や総腸骨動脈が極度に蛇行していたり石灰化していると、血管壁の損傷、迷入のリスクが高いため禁忌となりますが切迫した状態では相対禁忌で実施することも多いです。
大動脈瘤も原則禁忌ですが、ショック状態で手術での出血コントロールをでに時間を要する場合のみ挿入を検計します。万が一、大動脈瘤がある状態でAIBO(REBOA)を挿入する場合は透視下で行い、慎重に進めていく必要があります。
相対禁忌の症例を行う場合には透視下で行うと同時にガイドワイヤーの先行や位置を確認したバルーンのインフレートを徹底して行うことでリスク回避を図ります。
IABO(REBOA)の合併症
IABO(REBOA)はカテーテルを挿入して行う治療であるため一般的なカテーテルにおける合併症が同様に起こり得ます。主な合併症は以下の通りです。
合併症はバルーンカテーテルをワイヤーを用いずに挿入、バルーンの過拡張、体動などに伴う位置のズレなどによって起こることが多いです。合併症の予防は全てにおいて安全な挿入と拡張になります。透視下での挿入や挿入後に造影などが予防に大きくつながります。
また、緊急性などにもよりますが、造影CTなどで出血源を確認するのであれば併せて、CTで解離がないことを確認することも重要です。

合併症がないことも大切ですがIABO症例のほとんどは切迫性が高い状態なため、緊急的処置として安全面より早期の対応を優先することも多いです!
バルーンの破裂と損傷
バルーンの許容量を超えて拡張した際に起こる合併症です。許容量を超えるのみでなく、動脈硬化のような石灰化の強い血管で拡張した場合にも起こります。
バルーンを拡張するルーメンに注入抵抗がなくなる、または血液が引けるなどがあった場合には破損を疑います。また、効果が確認できない場合や拡張後突然状態変化が見られた時は即座にバルーンの破損を確認する必要があります。
破損している場合にはIABO(REBOA)を即座に抜去して、新しいIABO(REBOA)の挿入を検討します。
バルーン収縮後の血栓形成
バルーンを拡張している際はバルーン部分で血流がうっ滞するため、血栓が形成されやすくなります。また、バルーンを収縮している際もカテーテルやバルーンが滞在している部分は乱流となり、血栓形成が起こりやすいです。
血栓形成されていた場合でも重篤な場合を除き、まずは出血源の根本治療を優先します。対策としては根本止血がされた場合には即座に抜去することで、できる限り血栓形成を予防します。
虚血
バルーンを拡張している限りバルーン拡張部以下は血流が断絶されます。そのため、拡張時間を最低限にすることや、状況にあわせてデフレート(拡張を緩める)ことも視野に入れます。30以内のデフレートが望ましいですが、出血リスクが高い場合は生命を優先して再拡張なども視野に入れて実施します。
遮断時間が長いと再灌流障害が起こることもあるため、デフレート後も血流の評価は適宜実施することで合併症の早期発見に努めます。
IABO(REBOA)の準備と看護
IABO(REBOA)の準備
IABO(REBOA)には12FrのCOOK CODAバルーン、シース内径が10Frの大動脈閉塞用ブロックバルーン、7FrのRescue Ballonなどが存在します。比較的、使われることが多いのは7Fr Rescue Ballonですが、施設によって異なります。
拡張部位はアルゴリズムに加え、臨床症状やエコーなどの検査も加味して決定します。IABOを行うためには、本体と挿入までに必要な物品を準備していきます。

必要物品はどこに留置する場合でも同様です。
シースはAIBOカテーテルより太い径のシースを使用します。還流用のシリンジはキットによっては同封されていますが、必要時術野に出せるように用意しておくと良いです。
局所麻酔は意識レベルに応じて使用します。疼痛により体動が見られる可能性がある場合には安全面だけでなく挿入をスムーズに行うためにも使用することが多いです。
IABOの拡張液は破裂や拡張の程度が透視下で分かるように造影剤を希釈して注入します。血管内に使用する場合の多くはヨード造影剤です。
IABO(REBOA)挿入の手順
- 清潔操作で物品を術野に展開し、ガウンや手袋などを着用する
- カテーテル類の外側と内腔をヘパリン入り生食でコーティングする
- 挿入する部位の大腿動脈をイソジンで消毒し術野にドレープをかける
- 必要に応じてキシロカインで局所麻酔を行う
- 穿刺針を挿入し動脈への挿入を確認する
- IABOより内腔の太いシースを留置する
- IABO用のガイドワイヤーを挿入する
- IABOをガイドワイヤーに沿って挿入する
- 目的の部位まで到達したら透視下で位置を確認する
- 造影剤入りの拡張液でIABOのバルーンを拡張し血流を遮断する
- 付属の針またはナイロン針などで刺入部とIABOカテーテルを固定する
- 上からフィルムドレッシングなどで保護する
IABO(REBOA)の看護
IABO(REBOA)は状況が切迫している時に行う手技です。日常的に使用するものではないですが、いざ実施するときにはスムーズな準備と実施が非常に重要となります。あらかじめ実施する際の準備物品を一包化するなどすぐに準備できる仕組みを作るとともに、実施する際のイメージを明確にしておくことが大切です。
実施する場合は医師は術野の作成などを優先して行います。看護師は医師の準備と並行して、術野に物品を清潔操作で渡したり、ヘパリン入り生食の準備を行います。短時間での準備が重要になりますが、IABOなど重要な物品は必ずサイズを医師と確認し手渡しで渡すことで安全に配慮して準備が可能です。

準備の段階から実施終了まではタイムレスな流れが重要になるため、可能であれば看護師は2人以上いることが望ましいです。マンパワーを充足させることで安心かつ早急な対応が可能になります。
実施中はバイタルサインの綿密な観察と疼痛などに伴う体動などを注意して観察します。体動が激しい場合には、抑制なども検討しますが穿刺する鼠径部など体幹部の抑制は準備に時間がかかるため、急ぎの場合は体動を抑制する人員を準備する方が適切なことが多いです。
また、医師は術野に入るため追加で必要になり得る物品は近くに準備しすぐに出せる準備が大切です。IABO挿入の物品も必要ですが、IABO(REBOA)を挿入する症例はショックの状態であるため、急変時の薬剤や昇圧剤も準備が必須です。
術中から術後はタイムマネジメントを行うのも看護師の役割となります。ショックから挿入までの時間と挿入しバルーン拡張してからの時間は重要となるため、時間管理も念頭に入れて対応が必要となります。
バルーンの拡張時間は30分以内が望ましいため、挿入後はタイマーをかけて時間経過を見落とさないような対策もオススメです。
IABO挿入における看護師の役割
まとめ
出血の治療として根本止血はもちろん重要ですが、根本止血までの時間や全身状態をコントロールするためにはIABO(REBOA)は非常に重要になります。心肺機能停止に移行しうるような状況であれば、左開胸による大動脈遮断を実施することもあるため、IABO(REBOA)の挿入と併せて大動脈遮断の流れや急変時の蘇生などもイメージしておくと予期せぬ状況に柔軟に対応することが可能です。
また、IABO(REBOA)のみでなく、DCSなど緊急を要する手技は事前のシステム作りが重要となります。使用する物品のキット化や、挿入時の人員確保のシステム作り、透視化での治療を容易に行うためのX線装置の動線確認などを事前に明確に行なっておくことでよりシームレスな対応が可能になります。

日頃の備えが重要な手技であるため、日常から手順や物品などを定期的に確認しておくことをオススメします。


